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2022/10/01

コーヒーを飲みながら環境を語る(4) 欧州人の環境意識  理事 青木正光

  ドイツのフライブルグからアウトバーンを使って自動車、あるいは電車を使って北上すれば、フランクフルト、マインツとなり、ライン河沿いにある古城を見ながらケルン、デュセルドルフへと続きます。マインツから船でライン河下りを楽しむのもよし、フランクフルトからライン河沿いを通る電車を利用して車窓を楽しむのもよし、古城、ブトウ畑、ローレライなどを堪能することができるルートで、素晴らしい景色となります。6~7月に訪問すれば、最高の季節だと思います。

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ライン河沿いにある古城    ライン河を航行する船

1.ドイツとの接点

  欧州には、環境にも関係したビジネスで、たびたび出張し、フランクフルト空港からデュセルドルフまで行く際に車窓からお城やライン河の風景を見ていました。その後、ドイツ・デュセルドルフに3年駐在する機会に恵まれることになったのです。既存のビジネスを見ながら新規のビジネスで欧州でのマーケティング活動の使命を持っての責任者としての赴任です。折しもスウェーデンのIVFが主宰する「電子機器の国際難燃化プロジェクト」のコンソーシアムに参加していたので、ドイツからであれば日本よりも参加し易い背景もあり、駐在するのを楽しみにしていました。ドイツに赴任する直前に短期集中の赴任心構えなるものの研修を受講しました。異文化社会での振舞いを疑似体験し、さらには礼儀作法から英語による ディベート、交渉術、即答術などを含めての短期でしたが密度の濃い研修でした。最終日には、過去、駐在経験のある先輩諸氏の苦い失敗談を盛り込んでの話しがあったので真剣に聞いたことを思い出します。「ドイツを一言で言えば・・・」と言って駐在経験者が語ったのは1.ドイツ人は綺麗好きである 2.ケチである 3.物を大事にする 4.環境先進国でゴミひとつ捨てるにも苦労する 5.丈夫な長持ちをする製品化作り 6.魚は焼けない 7.日曜日は安息日で店は休みで音(芝刈りなど)のでるような作業はできない 8.アパートに住んでいると22時以降のお風呂は遠慮する必要がある。(流す水の音で階下の住民から苦情を言われる可能性がある) 9.誇り高き民族であり、自分の失敗を認めたがらないなどでした。上記の内容を聞けばある程度想像がつくものの、もし、自宅の窓を綺麗にしていなければ、あるいは、庭に雑草が生えていれば見知らぬドイツ人が尋ねてきて注意される・・・と。あるいは焼き魚は死臭の臭いがすると言ってドイツ人から嫌われる・・・など。赴任してみるとこれは本当であったことを実感しました。ゴミ処分にしても日本と比較すると回収回数は少なく自宅には大きめのゴミ箱を用意しての一時保管。そして街角に置いてある瓶、紙、衣類などの回収箱で処分するなどドイツ式のゴミ処分について学びました。

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個人の家のゴミ箱       街角に置いてあるゴミ箱(衣類、瓶、紙用)

  駐在した時期は、20年前の1990年代後半です。この時代にスーパーマーケットでの買い物にはマイバックを持参しての買い物がドイツでは一般化していました。レジ袋は既に有料であったので車のトランクの中にマイバックをいつも常備して対応していました。 野菜、果物などは計り売りが一般化し、「パック詰め」ではなく「ばら売り」でした。ドイツ包装廃棄物政令が発令されたのも、うなずけます。練り歯磨きは、二重包装(チューブ+箱包装)はなく、チューブのみの簡易包装、鉛筆は、カラー塗装されていない無地の鉛筆で、ホテルではタオルの使い方の要請文や固形石鹸から液状石鹸への切替などが進んでいました。レジ袋が日本で2020年7月から有料化され環境対応が始まりましたが、欧州は20年前に既に実施されていたのです。さて、赴任して暫くたつとドイツ人のみならず多くの欧州人と面識となり、いつしか夜遅く、飲みながら話しを聞くような機会もありました。  筆者の最大の関心は、「何故、欧州人はこれ程まで環境に関心を示しているか?」でした。色々と聞くと以下のような環境意識を持っていることが次第に分かってきました。

 2.欧州の環境意識

欧州で、山と言えばスイス・アルプス。アルプスの山々を見ると壮大な風景をまの当たりにします。北欧においては、森林と湖に囲まれ、実に風光明媚な自然環境に恵まれているのを実感し、これが「欧州」といった感じを受けます。環境先進国であるドイツでは「我々は環境を無傷の状態で子孫に引き渡す義務がある」と言うドイツの環境モラルがあります。また,国土が狭くて埋め立てでできたオランダでは「地球は親から譲り受けたものではなく、子どもから借りているもの」と言った思い入れがあります。オランダ廃家電処理協会では「先祖が築いた土地を冷蔵庫の墓場にするな」とのスローガンもあり、さらにデンマークには、「問題解決を子孫に残さない」というスローガンがあります。カトリック教会ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の1991年 年頭教書では、「企業の良さの基準は一つの利益だけではなく、人間を大事にする倫理と持続できる価値、安全、環境などを大事にする」ことであると述べています。このように欧州の各国は,次世代までを想定しての「環境」を守る姿勢が特に強くあります。

3ドイツ人の環境意識

  ドイツ人は特に環境意識が高くて、「環境先進国」とも言われています。長持ちをする製品化作りをモットーにし、物を大事に使うのがドイツ人でもあります。環境意識に強く影響したのは、ルール工業地帯から排出される煤煙で、青空が見えないほど悪化した状況だったそうです。筆者は昔、山口県宇部市に住んだことがあります。1950年代の宇部は炭鉱の町で、隣の小野田はセメントの町であり、当時、煤煙で空気は汚れており、その経験からするとルール地方も同様な状況ではなかったかと推察されます。1961年に「ルールに青空を!」のスローガンを掲げての運動が始まったと言われます。日本から炭鉱技術者としてドイツのルール地方に移住した経験の人が、今も、デュセルドルフに住んでおり、昔のひどかった空であったと述懐していました。「ルールに青空を!」の運動を指揮したのが当時、野党のブラント党首でした。そして1968年に政権に就き、各種の環境保護政策にメスをいれて環境対策に本腰が入れられるようになりました。
 その後、欧州ではイタリアで発生したダイオキシン汚染、ドイツや北欧などが国境を越えた酸性雨による被害、ウクライナのチェルノヴィリの原発事故の汚染された空気が周辺諸国に流れるなどが相次ぎ、さらには、バルト海汚染問題などが明らかになってきました。これらは、国民の環境問題への関心を高めるきっかけとなると同時に環境意識に大きな影響を及ぼしました。1980年代に廃棄物問題が指摘され環境汚染の進行に伴い、必然的にドイツ人の環境意識も高揚したと言われます。1986年に制定されたリサイクルを主眼にした「廃棄物法」と同法14条に準拠して策定された「包装廃棄物政令」が施行されたことで、ドイツの環境問題は、国民にとって身近な存在となったとも言われます。このような背景から前述した過剰包装を避け、レジ袋を有料化し、マイバックを持参しての買い物の一般化しているなどは、国民の高い環境意識が根底にあるからだと思います。

 参考資料

INDUST 2008年10月号

 

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