「酸性雨調査研究会の活動のご紹介」 古明地理事より
今回は古明地理事より酸性雨調査研究会の紹介があり、酸性雨調査研究会 権上かおる様より寄稿いただきました。
1.酸性雨調査研究会の活動
地球サミット前年の1991年に活動を開始した当会は、「雨を通じて、地球環境を考える。自分たちの体を動かして調査し、得られた結果をもとに環境負荷の少ない方法を選択する」をモットーにしている。雨は、多くの環境問題とつながっているため、気象、植物、モニタリングの専門家から教員、主婦までの幅の広い会員構成である。
これまで、 ‘雨が降ったら自分で感知し、ふたを開ける装置のアイデアコンテスト’‘-表参道Xmasイルミネーション環境調査’‘北区堀船の静かな住宅地の新聞印刷工場計画に河川舟運活用代替案-船と自動車の比較-隅田川舟運実験’ ‘全国酸性雨調査(毎年6月)’などテーマ別調査活動や、‘夏休みこども環境調査’はじめ各種環境学習支援、海外環境団体交流など、単に雨調査に留まらない様々な取り組みを行ってきた。
2.微小粒子状物質の認知度向上へ
「降ってくるのは雨ばかりではない」と降下ばいじんや浮遊粒子状物質への取り組みも行った。というのは、80年代までは、「大気汚染といえば二酸化窒素」が市民感覚で、90年代に入ってようやく浮遊粒子状物質(以下「SPM」と略す)が注目された。しかし、これまでなじみのないSPMや単位の理解には、自分たちで調査できることが不可欠であった。そこで、1995年に、‘ペットボトルとあなたの目で調べる空気の汚れ’SPM調査キットを開発、大きな反響を呼んだ。ペットボトルで空気量を測り、空気の汚れを段階的に数値化した色見本で評価するため、小学生でも調査できる。1997年、‘みんなの町の空気の汚れを調べ交流のつどい’は、小学校2年生から大人までの調査結果の発表が続いた。さらに、ハイボリュームエアサンプラーのろ紙に肺の形にマスクをして採取、‘ディーゼル黒煙が肺へ入る’ アピールを強めた。2003年のディーゼル規制開始時に、これを支持する世論の核を作ったものと自負している。ことに年末年始に行うと、12月下旬の逆転層が形成された日に濃度が最高値を示し、元旦には、ほぼ白色にしか見えず、社会状況による発生源や気象との関係を如実に表すことができた(図1)。現在でも調査を続けており、ディーゼル規制前と比べると格段に黒色度が低くなっていることがわかる。しかし、NO2や黒煙粒子の低減にとどまることなく、PM2.5などの微小粒子やナノ粒子の新たな問題についても、早くから警告を発し情報を発信し続けている。
3.調査は環境へのセンスを磨くツール
どんなに環境の知識があっても、知識だけでは自分の問題とならず環境負荷低減への自らの行動にはつながりにくいものである。体を動かし、知恵をめぐらして調べて得た客観的な結果は、自分自身への行動指針となる。‘調査’は、環境へのセンスを磨くツールと確信する所以である。しかし、高度に発達した情報化社会は、「手足を動かし、自分で考える」行動には、逆流といえる。夏休みこども環境調査も募集をアップした途端に迷惑メールの攻撃を受け、受信不能となり、興味を示すこどもたちも極めて少ないため、現在では実施できないでいる。しかし、出前授業の依頼を受け、直接説明をすると、こどもたちは目を輝かせて大気汚染の二酸化窒素カプセル調査などに取り組む。さらに工夫が求められてはいるが、人間にとって「学ぶ喜び」は変わらないということであろう。
これからを考えると粒子状物質のPM2.5やナノ粒子問題のように、「簡単には見えない・感じない/市民に調べることができない/市民の関心を得られない」と ‘3ない’克服は簡単ではないが、市民活動の底力(めげない、あきらめない、あせらない)で、これからも取り組んでいきたいと考えている。
酸性雨調査研究会HP: http://homepage3.nifty.com/jarn/
(酸性雨調査研究会 権上かおる)
古明地理事から
権上さんはアグネ技術センター勤務、金属、環境、一般出版まで広く手がけられ、その時代の課題に科学的な事実から鋭く切り込み、適切な問題提起、また解決に向けての具体的な取り組みを精力的に実践されてきた方であり、その行動力には深く敬意を表したいと思います。今回当NPO機関紙のために原稿をお願いしましたところ快く引き受けてくださり、まことに感謝に耐えません。権上さんの活躍の一端を紹介させていただき、これからの環境NPOの取り組みにまた新たな活力を育んでいただけたらと願っています。
写真左より
上段:「図1肺ボリュームサンプラー 右側の肺は元旦でほとんど悪化していない」、「SPM測定キットの説明」、「中央区の子どもとためす環境まつりイベント(2009年10月)」、下段:「小学校の出前授業で(江東区 2008年2月)」筆者権正かおる様、「甲州街道で肺ボリュームエアサンプラーで採取する主婦グループ」
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