「これからの社会インフラ に適応する非接触給電」









JR青梅線 昭島駅北口を降りると整然とした区画にモリタウン(ショッピングモール)やハーレダビットソンのショップが目につく。すこし歩くと昭和飛行機工業株式会社 昭島工場の正門が見えてくる。昭和12年にダグラスからDC―3型旅客機のライセンスを受け製造開始、戦前の名機 紫電改、96陸攻、99型艦載爆撃機を製造した広大な工場の敷地である。今回は電気自動車や電気バスにおいてコンセントを使わない充電システムの開発に取り組んでいる特殊車両総括部 EVP事業室 技師長の高橋俊輔氏に非接触給電のお話を伺った。
- 昭和飛行機工業株式会社について
昭和飛行機工業は1937年(昭和12年)に航空機の製造を目的として設立され、70年の歴史を有し、戦後は輸送機器関連の製造メーカーとして建築材料、航空機の機体各部、人工衛星のきょう体、ロケット用外殻などに使用されているハニカム素材(六角柱の蜂の巣状に加工した材料で軽量で強度がある)や、航空機装備品、防衛省向各種シェルター。レーダー用空中線アンテナ・航空機用地上支援機器、特装車を製造しています。又、広大な敷地を活用して昭島駅の北口周辺の都市開発も行っています。戦争中、米軍は戦後のことを考えていたのでしょう。横田基地に隣接する弊社のこの広大な敷地と施設は爆撃しませんでした。戦後、米軍は飛行場・工場・格納庫を利用しその後、弊社に返還されました。社有地(39万坪)の有効活用の一環としてショッピングモール:モリタウン(130店舗)、フォレストイン昭和館、ハーレーダビットソン昭和の森、ゴルフ場(両面からの打ちっぱなしの240打席390ヤードの大型練習場と18ホール/パー72のゴルフコ-ス)、テニスコート(野外34面・室内9面)、は弊社のリアルエステート事業部が手がけたものです。
- EVP事業部と非接触給電の研究について
私自身、元造船企業に在籍し、水中ロボットの研究をしていたのですが、その後、同期の大学教授(早稲田大学)から電気バスの研究をいっしょにやらないかと声がかかり非接触の電力伝送方式の研究を弊社でスタートすることになったわけです。(H.15年~)非接触給電はワイヤレスで電力を給電する技術で大きく分けて①磁場結合共鳴方式②マイクロ波無線方式③電磁誘導方式がありますが、実用化されているのは③の電磁誘導方式です。電磁誘導方式の原理は19世紀のファラデーまでさかのぼりますが、電線に電気を通すとその周りに磁気が生じ、逆に磁気があれば電気が発生する原理といえば学校で習ったことがあると思います。コイルに電流を流し磁力を発生させてその磁場の範囲に別のコイルを置くとそのコイルに電気が流れます(電磁誘導)。この原理はいろいろなところで使われています。自動車組み立て生産工程や物流・搬送・クリーンライン等、又、フェリーなどで活用すればエンジンをかけなくても冷暖房や移動が可能(省エネでしかも二酸化炭素は出さない)。身近では電動歯ブラシの充電にも使われています。
- 非接触給電と電気自動車・電気バス
電気自動車・電気バスに非接触給電方式を用いるメリットは安全で操作が容易、クリ-ンであることです。電気自動車は1回の充電で走行する距離を伸ばすにはバッテリーを多く積載しなければなりません。そうすると重量とスペ-ス、コストの問題が発生します。非接触の方法だと地上に給電コイルを設置しておけば、頻繁に充電ができてコンセントでの充電が必要なくなります。接点がないので車のガソリンスタンドのようなところにも安全かつ容易に設置でき、雨中でも電気自動車の充電ステーションにおける地絡などの心配もいりません。都市における電気バスの活用は低炭素社会・高齢社会と相まって高まっていくでしょう。非接触給電はその普及の大きなツ-ルになると考えられます。弊社では車椅子、ゴルフカ-ト等の任意位置での給電や駐車場などで車の停止位置がずれても充電効率が高い中距離用の給電システムも開発しています。今後、非接触給電の新たなビジネスモデルもいろいろ出てくるでしょう。弊社は非接触給電の普及に向けて国(NEDO)との研究開発「高性能・低コスト非接触給電システム(IPS)の開発」といくつかの自治体と社会実験(今後実施する社会実験を含む)を行ってきました。本技術は実用化の普及段階に入ったといっていいでしょう。
- 実用化にあたって法的規制について
現在、非接触給電の電気バス・電気自動車を走らせるために電波法上、一台、一台、所轄官庁に申請して設置許可をもらわなければいけません。今後の普及促進を考えた場合型式確認(製造事業者が機器の型式について技術的条件に適合していることの確認を自ら行い、総務大臣に届けておく)を取得するなどの必要があります。(電波法100条2項、電波法規則第45条3項、無線設備65条2項)、又、道路上に非接触給電の設備を設置することに関しては現在、道路要件規定が殆ど無く、統一的な法的整備が待たれる状況です。(海外でも専用道路・バスベイ(バスが止まっても交通に影響がないように舗道側に道路を広げたところ)に設置している)
- ヒアリングを終えて
自動車等の移動体の非接触給電方式を考えることは社会インフラを考えることに他ならない。エネルギーの大変革期を迎えてこのことは国際的な標準化の構築という競争にも結びつきそうだ。蓄電技術と給電技術が相互に補う仕組みも出てくるだろう。19世紀に発見された原理は今も変革期の技術として脈々と活きている。
写真左より上段:(EVP事業室 高橋都俊輔 技師長)、(99型艦船爆撃機、DC―3型 旅客機写真、紫電改、96陸攻イラスト)、(昭和飛行機工業のハニカム製品)、(模型を使い電磁誘導の説明する高橋技師長)、
中段:(非接触電力伝達方式の比較)、(NEDOの実証モデル評価事業で製作した非接触給電マイクロバス)、(車椅子、ゴルフカートの任意の位置での非接触給電も可能)、
下段:(観光地での交通社会実験(奈良県))、(住宅地での交通社会実験 ユーカリが丘 千葉県)、(中距離用電磁誘導システムの開発)
出典:昭和飛行機工業㈱ EVP事業部 資料より
補足:IPS:inductive Power Supply(低コスト非接触給電システム)
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