世界に貢献する水処理膜技術 東レ株式会社 第2部 進化する膜技術







第2部 進化する膜技術
第1部(2008年12月15日~12月31日HP掲載)では膜技術の概要として地球環境における水不足の現状と水処理膜技術についての話だったが、今回は、海水を真水にする膜技術(ホウ素の除去に成功した膜技術)や膜市場、膜メ-カーについて記述する。第1部の続きで対応していただいたのは水処理事業部門 メンブレン事業第1部長 房岡良成氏、同課長(事業企画担当)丸橋清之氏である。
-ホウ素を除去する逆浸透膜技術-
海水から真水を得る技術(海水淡水化技術)については蒸発法と膜処理(逆浸透膜)の2つの方法があり、現在では経済的に優位である膜処理の技術が普及してきています。海水から真水を造る段階で膜処理(逆浸透膜)では、ほとんどの物質を除去できるのですがやっかいなのは海水中のホウ素の除去でした。ホウ素は陶磁器の釉薬やホウ酸として医薬品、メッキ溶剤、防腐剤、殺虫剤等に使用されていますが、動物体内に入ると生殖阻害毒性(子供が産めなくなる)や柑橘類の立ち枯れ病を起こします。また海水中のホウ素は非常に小さく(小さな分子)て、淡水よりも数十倍の濃度が含まれており、従来、除去するために再度逆浸透膜を通したり(二段処理)、低ホウ素濃度の水を混ぜて真水を造っていました。ホウ素というやっかいな小さな物質を除去する性能を上げることがなかなかできなかったわけです。弊社はその課題に取り組み逆浸透膜の孔径とその分布とホウ素の除去率の相関関係を明らかにし、ホウ素の除去率を高める膜の孔径の設計に成功したわけです。(膜の分子にホウ素が透過する隙間があり、その隙間を小さくし透水性を損なわずホウ素濃度は従来の半分に減じることに成功)これには微小な孔径を測定する技術(東レリサーチセンター:陽電子消滅寿命測定法により海水淡水化用RO膜の孔径の測定に成功)が大きく貢献しています。(資料1)(資料2)(資料3)参照
-世界で展開される「逆浸透膜」-
シンガポ-ルの水源は大半をマレ-シアからの輸入に頼っています。水の確保は国家戦略としても重要視され下廃水の再利用、海水の淡水化に力をいれてきました。弊社は「シンガポ-ル・チュアス地区」で生産水量13.6万トン/日の環太平洋最大の海水淡水化プラントに使用されるRO膜を提供しています。ここではシンガポ-ルにおける全使用水量の10%以上、生活用水使用量の20%に相当する量をまかなっています。(高ホウ素除去RO膜使用)
「トリニダッドトバゴ・ポイントリサ」 生産水量13.6万トン/日の西半球最大の海水淡水化プラントに弊社RO膜が使用されています。(資料4) 「アルジェリア・ハンマ」では生産水量20万トン/日のアフリカ最大の海水淡水化プラントに弊社RO膜が使用されています。(資料5)弊社の低ファウリング逆浸透膜(膜表面に有機化合物や微生物の付着により透水性能が低下するのを防ぐ、汚れにくい膜)は「クェ-ト・スレビア」(資料6)の世界最大の膜法都市下水再利用プラント(生産水量32万トン/日)や本年稼働予定の「シンガポール・チャンギ」の下廃水再利用プラント(生産水量22.8万トン/日)にて使用されています。(下廃水再利用)また、かん水(塩分を含んだ陸水)の淡水化では、サウジアラビアの生産水量12万トン/日のプラントや韓国の東アジア最大のかん水淡水化プラント(大山、生産水量8.4万トン/日)に使用されています。 以上弊社の逆浸透膜が使用されている代表的なプラントをあげましたが、これ以外にも米国、中国、欧州、中東、北アフリカ等、世界の各地で海水淡水化、かん水淡水化、下廃水の再利用等逆浸透膜は活躍しています。(資料7)今後の世界の水資源確保に応え、貢献できるよう弊社はグロ-バルな製造体制を展開していくつもりです。
-膜メーカー、膜の自社開発について-
世界にはたくさんの膜メーカーがありますが、1部でも述べたように膜の使用には水質や用途によって使い方が異なってきます。弊社はご存知のようにはじまりが合成繊維の会社ですので、有機合成や高分子化学の技術蓄積があり、膜素材から研究開発がはじまりすべて自社開発で商品化してきました。M&Aはなかったわけです。(資料8)そのぶん膜の使い方には自信をもっています。環境に応じて適材適所の膜の組み合せの提案などを行い(IMS統合的膜処理システム)、水質管理やコスト低減などに役立ててもらっています。
-ヒアリング(取材)を終えて-
1部では世界の水問題と膜技術の全般のお話を伺ったが、2部では膜技術(特にホウ素除去技術)と世界で稼動しているプラントのお話を伺った。今回の話を聞きながら、膜技術は極小の分子の世界からはじまり、広大な地球規模の世界に貢献するグロ-バルな環境技術であり、膜技術を知ることでデリケートなミクロとマクロの自然界の相関関係をあらためて再認識した。
左より写真上段:資料1:海水淡水化RO法の技術動向(海水淡水化のプロセスフロー)資料2:海水淡水化RO法の技術動向(ホウ素除去性能比較と動向)
資料3:陽電子消滅寿命測定法によるRO膜の孔径分布
写真中段:資料4:トリニダッドトバゴ・ポイントリサでの海水淡水化プラント、
資料5:アルジェリア・ハンマの海水淡水化プラント
資料6:クエ-ト・スレビアの都市下水再利用プラント
写真下段:資料7:東レの水処理膜事業とグロ-バル展開
資料8:世界の膜メーカー
出典:「世界の“水環境”課題解決に貢献する東レの水処理技術」 2008-11-18'TORAY' innovation by Chemistry より
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