都市計画と環境 (生物多様性の保全の環境軸) 森ビル株式会社 訪問






都市計画や都市再開発は、空間や時間軸などスケ-ルが大きく、私達の社会生活の基礎の部分から根本的に変えていくことが可能になる。その計画の中に「生物多様性の保全」という環境軸を織り込んでいくという、さらにスケ-ルの大きな再開発が進行中である。今回は東京都心での都市計画、再開発を推進している森ビル株式会社を訪問し、都市計画と環境についてお話を伺った。対応していただいたのは企画・調査室長 都市開発事業本部 総合計画統括部長 取締役 稗田泰史氏、都市開発事業本部 第一設計部 技術顧問 山口博喜氏である。
-都市計画と環境について、
弊社では「Vertical Garden City-立体的な緑園都市」を理想の都市として提唱しています。都市の中心部を立体的にかつ集中的に活用しながら、周辺にも自然を復活させます。都市の一体開発は、建物を集約して超高層にすることで広いオ-プンスペ-スを取ることができ、さらに屋上も緑化することで緑化面積が増え、動植物が戻ってきます。弊社では実際にこれまで、アークヒルズを先駆けとして、愛宕グリーンヒルズ、元麻布ヒルズ、六本木ヒルズ、そして表参道ヒルズなどの一連のプロジェクトで、こういった緑の保全・創出に努めてきました。
さらに、「Vertical Garden City」は、風の道をつくり都市の温度上昇を抑え省エネにもなります。また、職住近接の都市開発は移動のエネルギーの削減になりCO2の削減にもなります。
人間は太古に戻ることはできません。私達は現在の社会システムを発展させながら、同時に自然環境を維持していかなければならず、都市計画・再開発において、自然環境に配慮した様々な環境技術やシステムの開発が、今後さらに必要になってくると考えています。
-「生物多様性の保全」というコンセプト(概念)
そういった中で、「生物多様性の保全」ということが「温暖化」の問題と共に、緊急に取り組むべき重要な課題として認識されるようになってきました。私達の社会には様々な生物が生息する自然環境がありますが、この自然環境は長い年月をかけて地球が創りあげてきたものです。そして、その自然環境のバランスが崩れると人間生活を脅かすという問題が発生します。つまり、従来の生態系のバランスが崩れると、生態系から得てきた様々なサービス(サポート、緩和作用、供給作用、文化的効用に分類される)が享受できなくなり、結果としてこのことは私達の食料の問題(生存)とも結びついてくるわけです。生物多様性の保全とはこの自然のバランス(連鎖)を考え、長年にわたる人間の営みにより失われてしまった地球本来の豊かな生態系を取り戻していこうという取り組みなのです。従来の自然保護の考え方はどちらかというと特定の生物、景観、地域等を保全することを考えていましたが、「生物多様性の保全」という考えはそれを越える生態系全体を考える大きなコンセプト(概念)と言って良いでしょう。このように「生物多様性の保全」を考えることは非常に重要なことであり、今や国の国家戦略としても掲げられています。(第3次生物多様性国家戦略 2007年 閣議決定、2010年には名古屋市で生物多様性国際会議が開催される)
-「生物多様性の保全」と都市計画について
前述のように、我々はこれまでも、緑豊かな都市環境の創造に努めてきました。さらに、今後は、そこに「生物多様性の保全」という環境軸を織り込んでいくことが非常に重要になってくると考えています。ただし、我々も取り組み始めたばかりですから、どの程度まで自然を回復すれば良いのかといった回復度(時間軸)や生物多様性の評価軸等は、今後の課題であり、これからのいろいろな実践経験で形成されてくると考えています。
弊社では現在、東京虎ノ門・六本木地区の再開発事業において、生物多様性に貢献するという観点から、地域環境の再生に向けて地域種を活用した緑化を実現しようと、潜在自然植生の再生と共に、二次林や草地、水路、池、畑地など様々な場を用意することを計画しています。この計画に伴い、計画地域での生態系(かつてどのような動植物が生息していたのか、また現在はどうなっているのか)の評価を都市計画の中に組み入れています。(緑地の生態系評価を実施:(財)日本生態系協会に依頼)
-地域の環境学習について
緑化をしたスペースは様々なコミュニティ活動の場としても活用されてきました。たとえば、六本木ヒルズのシネマコンプレックスの上にある「屋上庭園」には水田がありますが、六本木ヒルズや地域にお住まいの方々に参加していただき、毎年、田植えや稲刈りのイベントを行なっています。
また、アークヒルズのアークガーデンも地域の子供たちを中心に、多くの環境学習プログラムに活用されています。さらに、一般の方々にガーデンをご覧いただく機会として、来る10月27日(月)には、平素非公開としている「ルーフガーデン」を秋の特別公開(11:00~18:00)として一般に開放致します(問い合わせ:ヒルズガーデニングクラブ 03-6406-6664)。
-ヒアリングを終えて
スケールの大きな都市計画・再開発事業のコンセプトに環境軸が織り込まれていけばエネルギー、CO2、ごみや廃棄物処理、交通、etc、の環境問題はかなり減少するのではないだろうか?同時に都市計画・再開発事業は私達の社会生活を変革する重要な基本設計であり、チャンスであることを再認識した次第である。環境軸を織り込む都市計画にエールを送りたい。
写真:左より上段:[都市開発事業本部 第一設計部 技術顧問 山口博喜氏、都市開発事業本部 総合計画統括部長 取締役 稗田泰史氏、広報室 森澤恭子氏]、[一体再開発とヒ-トアイランド現象緩和]、[ア-クヒルズの森]、下段:[生物多様性の保全の評価を実施する東京虎ノ門・六本木地区の完成イメ-ジ]、[六本木ヒルズの屋上庭園での田植えの様子]、[緑豊かなアークガーデン(アークヒルズ)]、[アークガーデン(フォーシーズンズガーデン)にて子供達が緑に触れる] 出典資料,写真:森ビル株式会社 会社パンフレット、環境への取り組みより
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