【富山からの報告】 柴野会長より
―― 野生動物との共存 ――
先日、妻が、知人から「熊がリンゴの木の上に台座を作ってそこに座り、リンゴを食べているらしい。その形跡がある。」との話を聞いてきた。今年は、熊が人家の近くまで出没する件数が、異常に多いと聞いているが、堂々と木の上に台座を作って、食べているとは驚きであった。興味をそそられた私は、翌日、妻と、知人夫婦と共に現地に向かった。前夜に雨が降ったこともあり、台座を形成していた木の枝は、概ね元のように、何もなかったような状態に戻っていた。しかし、果樹園には、熊が通った痕跡、食べかす、糞があちこちに見られた。農園主にうかがうと、「熊は毎日のようにやって来ているようだ。近くの柿の木にも台座が作ってある。熊は、山に戻らず、昼は近くの林の中で寝ている。」また、「冬眠までの間に、満腹になれば、山に戻る。」と言う。最近の、新聞テレビ等で報道されるのは、『熊が人間に危害を加えた。』と言うニュースが圧倒的に多い。これは、真実の一面を伝えているに過ぎなくって、報道の水面下には、熊との共存の姿もあるのではないかと思う。『熊と人間の遭遇は、以前からあった。しかし、熊と人間は、うまく共存していたので、人間が熊にやられることもなかった。農作物を荒らされても、駆除することには結びつかなかった。』ということの存在も忘れてはならない。 現在も、多くの農家の人は、『少々の被害は、大目に見てやろう。人畜に被害さえ及ばなければ良いじゃないか。』と、大きな心で熊に接しておられるのではないだろうか。先ほどの果樹農家の人にとっても、一晩に、実ったリンゴの半分近くも食べられたのでは、甚大な被害ではないかと思う。「毎晩来ているようだ。」とか、「山に帰らず、近くの林で寝ている。」といった話しぶりの中には、駆除しなくてはと言う気持ちは感じられなかった。 猿や熊といった野生動物が、人家の近くに来て、農作物を荒らすというのは困りものである。その被害額も生半可な額ではないと言う。一度、里の農作物の味を覚えた野生動物は、山に食料になる木の実などがあっても、里へ下りてくることになるだろう。かといって、駆除することで、問題が解決するとは考えにくい。私は、今もなお、野生動物との共存で生活をしている農家がある地域に住んでいることに、幸福感を覚えると同時に、野生動物が、人間に危害を加える、本当の原因を追究して、現状を打開しなければ、われわれの生活も危うくなるという気がしてならない。写真:熊が太い小枝を集めて、柿の木の上で座れるようにしている
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