今年(平成23年)の近畿地方の夏の山沿いでは、例年になく多くの雨が降りました。私が通う鮎の漁場近くの降雨量を調べてみると、7月約600mm、8月約300mm、9月1700mm以上と非常に多量の雨が降っています。河川は増水し鮎日和の日が少なかったようです。近年河川環境の悪化と鮎質の劣化が進行し、鮎の食味はもとより鮎釣りの醍醐味が少なくなり、年齢と伴に鮎・鮎釣りへの執着がだんだんと少なくなっているように思えます。これに反比例して河川環境の悪化を嘆く心は年々大きく成長します。この現実に対して私は何をすべきなのか。何ができるのか。
このままどんどん河川環境が悪化するのなら、「せめて現況の河川環境の実態を記録に残して置きたい」と。「来年この景色はなくなるのでは」という恐怖感に駆られて、「もっと早くから記録しておけばよかった」という反省のもと、最近では渓流景色のビデオ撮影や写真撮影を始めています。
幸いにも今夏、高性能・軽量の水中カメラを獲物としましたので、これで撮影した写真を見ていただきたいと思います。しかし何分素人で不慣れなカメラ扱いでありますので、若干ピントのずれた部分についてはご容赦願います。
写真1 『渓流風景①』
大雨後3日。
極若干の「白にごり」が残っている。
写真2 『渓流風景②』
渓流遠景。
昔の渓流の名残を感じる風景。
写真3 『渓流風景③』
渓流遠景。右岸曲がりに大きい礫の堆積が見られる。(谷筋より落下?)
岩と木の境界や岩盤の色の違いから、大水が出る高さが推定できる。
写真4 『渓流風景④』
渓流と巨岩。美しい渓流に見えるが、中央左部分の右岸斜面崩壊。落ち込み下の淵が無くなり、急流となっている。
写真5 『渓流風景⑤』
大雨後3日。玉石に珪藻は付いていない。
水質はよさそうだ。
写真6 『渓流風景⑥』
大雨後3日 濁流で移動し大石が磨かれたためか、表面が真っ白な岩
後方、平水時には目立たない滝が出現。
写真7 『水中写真①』
大雨後3日。
急流では、珪藻が飛んでしまっている。
写真8 『水中写真②』
落ち込み手前の水中写真。大雨後10日でいい色の珪藻が付いている。
下流側に小砂利が堆積。
写真9 『表層崩壊』
十数年前の土砂崩れ跡。
緑がなかなか回復しない。
写真10 『渓流風景』
渓流激変。左岸右岸ともに砂礫の堆積が著しい。アマゴの逃げ場所が少なくなっている。
写真11 『豪雨初期渓流風景①』
谷筋から濁流が支流へ。
写真12 『豪雨初期渓流風景②』
集中豪雨で濁流になりつつある支流。岩の間に草が茂っている。十数年前はこのような草が生えていなかった
写真13 『渓流風景⑧』
渓流激変。大雨後右岸に堆積した大石・岩(高さ約2m)
水流で運ばれてくる。
写真14 『チビアマゴ』
砂利床を泳ぐ小型アマゴ。
尾びれの橙色が美しい。
堆積砂礫の小ささがわかる。
写真15 『放流天然鮎①』
大雨後10日。落ち込み手前の珪藻が付き始めた岩を「なわばり」とする小型鮎。
写真16 『放流天然鮎②』
身をくねらせて珪藻を食む直前の鮎。
写真17 『放流天然鮎③』
一等地に「なわばり」を持つ鮎。
撮影していても逃げない。
写真18 『鮎の食み跡』
二筋の笹の葉状の食み跡の幅で鮎の大きさがわかる。
この程度の食み跡では鮎の数は少ない。
写真19 『腐れ垢?』
珪藻の色に注目。
モヤモヤした感じで剥離しやすい。
手前に緑がかった珪藻(緑藻?)が見られる。
写真20 『川の獲物』
水はきれいが香りの少ない「香魚」鮎。
今年の鮎は小ぶりでした。(20cm~22cm)
各写真を一見すると、美しい渓流風景と感じる方が多いと思いますが、鮎釣りを始めた昭和50年代から比べても大雨が降る毎に河川風景が徐々に悪化していることを否定できません。過去の降水量データと河川環境の変化を見ると、2,3日で300mm~500mmの大雨があると土砂崩れが発生し、河川では大石が動き渓流風景が激変しているように感じます。同時に土砂の堆積が進行し、土砂崩れ跡の緑の修復が進行する前にまた大雨が降ってしまうという降雨強度の増大と頻発による悪影響を受けているようです。大雨による土砂崩れを起こしている森の状態はどのようなものなのか。どのような森が土砂崩れを起こし易く、どのような森が起こし難いのか、崩壊現場での検証が必要です。近畿の杉林と屋久杉の森の違いはどうなのか。広葉樹の森と針葉樹の森の違いはどうなのか。答えが出てくるのではないでしょうか。
8月25日に発生したスロー台風12号による空前の降雨により紀伊山地の十津川水系では、明治の大水害以来の甚大な水害が発生しました。そして深層崩壊と呼ばれる大規模な土砂崩れにより天然の堰き止め湖が出現しています。大雨による川相の変化どころの話ではありません。航空写真で見ると1平方キロメートル程もあるのではないかと思えるような大規模な山自体の片面全体の大崩落により、十津川支流が堰き止められ、既存の人工ダム湖に相当するような湛水面積の土砂ダム湖が、今後の大雨により出現するのではないかと心配しています。既存ダムの有効貯水量が約1700万トンに対し、これらの土砂ダムが満水になれば500万から800万トンと計算されているようですが、決壊すればどのような連鎖被害を及ぼすことになるのでしょうか。下流の人工ダムは受け皿になれるのでしょうか。
自然の猛威を想定外とした原子力災害、人智の及ばぬ天然災害。本当でしょうか。思考停止と継承不全、そして想像力の欠如。人類は野生の直感を無くしているのでしょうか、それとも情報が頻発・過大で処理できないのでしょうか。この土砂ダムが都会の上流にできていれば対策は変わるのでしょうか。同様の降雨が2回連続する確立は想定外ですね。自然体で修復してください。森川先生。
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