「春の立山 雪の大谷」 柴野会長より
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前日までの雨天がウソのように晴れ渡った2012年5月13日、立山カルデラ砂防博物館が主催した「2012 フィールドウオッチング 『春の立山 雪の大谷』」に参加した。
博物館(標高475m)を出発したバスは、新緑の燃える美女平(標高約1000m)を通り、立山杉の林の間を進んだ。このあたりから雪の世界が始まり、林を抜けるあたりでは一面雪の原で、2日前に積もった新雪で、サングラスをかけないと目が痛いほどである。
標高が上がるに従い積雪量が増え、天狗平(標高約2300m)付近からは、バスの窓から外の景色が見えづらいほどの高さになった。今回のフィールドウオッチングの目玉である『雪の大谷』に入ると10mを越える雪の壁(当日は最高地点で15mの積雪)で、見えるのは雪の壁だけである。多くの人が雪の大谷を散策しており、評判の高さが伺える。
標高2450mの室堂でバスを降りると、そこはラッシュ時の駅構内の有様で、中国語、韓国語など近隣諸国の言葉が行き交っていた。ちなみに、台湾の旅行会社が選定した『生きている間に見ておきたい世界の風景28』に「立山の雪の大谷」が入っているという。
「雪の大谷」へ行く前に、自然保護センターで立山カルデラ砂防博物館の学芸員から立山の雪や雪の大谷について説明を受けた。
雪の大谷がもっとも深かったのが昭和56年の23mで、今年は17mだったとのことである。
道路をつけるために除雪した雪で雪の大谷が出来ると思っている人が多いけれども、これは自然に積もったものだそうだ。通常除雪と言えば、ラッセル車のように雪を遠くへ飛ばす方法が思い浮かぶが、立山アルペンルートの除雪は、ブルドーザーで薄く削り押して行って谷へ落とす作業を繰り返すそうである。
今は、雪の下の道を探すのにGPSを用いているが、昔は周囲の山などの風景から推定していたので、作業が出来るのは職人技を持った2~3人しかいなかったそうだ。彼らの腕前は、GPS以上だとの評判もある。
室堂周辺は1年に20m近く積もり、それが全て解けてしまうという世界でも有数の豪雪地帯で有名だが、20mもの雪の壁の間を歩きながら見られるのは、世界唯一とのこと。
1年のうち9ヶ月は雪が積もっている立山の雪は、その期間の気象の記録でもある。
自然保護センターでの解説の後、「雪の回廊」という学習の場に移って解説してもらった。
雪の壁には、横縞が入っていて、それぞれその性格から「しまり雪」「ざらめ雪」「氷板(雪が雨や暖気で解けて凍ったもの)」「黄砂の層」「汚れ層」などと名づけられていて、気象観測の情報や積雪の情報等からそれぞれの層が形成された日が分かるので、「雪のカレンダー」といわれている。
また雪の化学分析で、海の塩の成分、酸性雨の成分、火山の噴火物等が測定される。立山の東斜面にある万年雪(氷河と認定されたものもある)には、1950~60年代にアメリカやソ連が行った原爆実験の際の放射性物質も含まれているそうだ。
昼食後、室堂平周辺で、雪に関わるいろいろなことを教わった。
気流の関係で、建物の風上には雪が積もらないこと。地形の関係で数mはなれるだけで積雪深が5mも違うこと。雪庇の上が非常に危険なこと。など、いろいろなことを教わり非常に有意義な1日であった。
標高差250mほどを一気に滑り降りる春スキーを楽しむ人たちをうらやましく思いながら下山の途についた。
写真:上段左より:立山黒部アルペンル-ト、雪の大谷で最も深い所、雪の大谷を散策する人達、中段左より:雪の大谷を通るバス、美女平付近から称名の滝を望む、標高1500m付近、下段左より:雪のカレンダー、立山杉の林を抜ける
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