2025年頭所感  柴野会長より

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新年明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いします。

2023年7月に、グテーレス国連事務総長が「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が到来した。」と危機感をあらわにしました。また、2024年末には、2024年までの10年は、前例のない気候が続き「死の熱波の10年」と指摘し、「これはリアルタイムで進行している『気候の崩壊だ』と述べ、気候変動による最悪の事態を回避するには、全世界が一致して地球温暖化に対処することが不可欠だ、それが今しかないと訴えました。2024年の日本の平均気温が1898年統計開始以来最高の気温でした。世界の平均気温でも、1891年以降最も高かった昨年の値を大きく超え、最も高い値となっています。

2024年に異常高温が出現したのは、東アジア東部、東南アジア、アラビア半島~地中海東部、米国西部~メキシコ、中米~南米北部・中部で、寒波・低温がアフガニスタン周辺、南米南部で、 大雨・多雨が、ヨーロッパ南部およびその周辺、東アフリカ北部~西アフリカ、米国南東部で、少雨がウクライナ及びその周辺でありました。(気象庁資料より)

年中どこかが異常気象に見舞われています。しかも、その規模が、今まで経験したことの無い規模の記録を更新し続けています。   グテーレス国連事務総長の発言を裏付けるもので、人類・地球の喫緊の課題と言えます。一方、アメリカ大統領選挙でトランプ氏が選出されました。トランプ氏は、前政権時代の政策への回帰を謳い、UNEPからの脱退を明言しました。地球温暖化を招いた主要な原因は、二酸化炭素等の温暖化ガスであることは周知のとおりで、世界で、脱炭素の活動を活発化させている流れに逆行するものです。

地球温暖化防止の活動は、政府・自治体任せにしてよいものではありません。

温暖化で地球が滅びるのなら、地球以外の星に移住すればよいのだから、そのための技術開発を急ぐべきだとか、自国の発展のみを追求し、他国を攻めることに注力しているような国・政府に頼るわけにはいきません。地球温暖化がもたらす異常気象は、今すぐ沈静化できるものではありません。

研究者・企業は、一刻も早く地球温暖化を食い止める技術の開発に尽力し、企業・国民は、発生した被害から一刻も早く元の状態に戻るように協力し合うことが肝要で、宇宙へ飛び出すなどといった夢を追いかける人たちに歩調を合わせているわけにはいかないのです。

 私たちNPO法人「日本環境技術推進機構」は、異常気象が頻発し、過激さを増している社会において、これらの発生を食い止める技術等の環境技術開発、環境経営を目指しておられる事業者を支援し、ともに活動することが使命であると考えております。

このような基本的な考えのもと、本年も多くの皆さんのご支援を得ながら、事業を推進してまいる所存でございます。この趣旨にご賛同いただき、多くの皆さんの参加・ご協力をいただきますようお願いいたします。

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2025/01/01

2025謹賀新年

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謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申しあげます。昨年は内外ともに大きな事件がありました。能登半島地震、豪雨災害で二度にわたり甚大な被害がでています。能登の地震・災害に関しては復興にかけて1年も経過しています。又、国際面でいうとアメリカのトランプ氏が再び大統領に就任することが決まりました。米国のトランプ氏は、ドリル、ベイビ-、ドリル(化石燃料を掘って掘って掘りまくれ)と力強く宣言しています。今後、温暖化の問題が政治の問題になることは想像できます。

 エネルギー政策は環境技術に直結しており、今後ますます環境技術に対する注目度が増すことはいうまでもありません。従来の培った環境技術・新技術の情報発信とそのプロジェクトメーキングは必要不可欠です。   

 本団体は今年も多くの環境技術の紹介と普及を推進していく所存です。ご支援・ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。今年(2025年)のJETPAはさらに内容を充実し積極的な活動を幅広く展開していく所存です。

 今年のJETPAの環境事業

1.環境技術発掘・評価事業
優れた環境技術を発掘し、評価・広報・普及する活動

2.環境技術の交流・移転事業
内外関係機関、団体との技術交流会、親睦会の開催、環境技術の調査、開発支援活動

3.環境技術に関するネットワ-ク構築事業
産官学による環境技術の研究会・講演会・ゼミナ-ルの開催

4.環境相談事業
環境マネジメントシステム構築、ISO14001認証取得、エコアクション21認証取得・登録支援、環境技術の調査

2025年 元旦 特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 理事一同

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2024/11/01

JETPA 環境インフォ-メ-ション

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2024年コスモス国際賞受賞記念講演会

「効果的な環境保全施策と実践のために」

開催のご案内
日時:2024年11月16日(土曜日) 13001500(受付は1230より)
場所:東京大学 伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール 
申込方法:花博記念協会ホームページより申し込みください。

お問い合わせ:06-6915-4513 FAX06-6915-4524 

主催:公益財団法人国際花と緑の博覧会記念協会 後援:農林水産省、国土交通省、文部科学省、環境省、英国大使館

        ブリテッシュ・カウンシル、東京都教育委員会、生物科学学会連合、日本生態学会日本生物教育学会、環境科学会



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2024/08/11

柴野会長 近況報告 エコアクション21の審査委員の声 (於)富山環境財団)



柴野会長の記事が富山環境財団のHPhttp://www.tkz.or.jp)に掲載されました。

富山県は変化に富んだ自然と豊かな水の県といわれるように自然に恵まれた我が国屈指の県で富山環境財団は県民、企業、行政が一体となって地域に根差した環境保全活動に取り組んでいます。その取組の中のSDGsに関しては

  1. 協働推進事業
  2. 環境教育推進事業
  3. 普及・啓発事業
  4. 地球温暖化防止活動推進センター事業
  5. エコアクション21事業

上記5つの事業を実施しています。

 

今回は富山環境財団のエコアクション21の審査委員として活躍している柴野会長の記事が

審査委員の声として掲載されました。審査委員としての心がけ、エコアクション21との出会い、キャリアが大変わかりやすく以下に掲載されています。

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これを機会に地域に根差した環境保全活動を実施している企業・団体・行政についてより広く本HPにも今後掲載できればと考えています。

 

 

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2024/05/31

青木理事より コーヒーを飲みながら環境を語る(6) 景観を大事にするドイツ

ライン河沿いを走ってフランクフルトに入ると暫くするとウイスバーデンとなり、風光明媚な場所となります。さらに走るとマインツとなります。「印刷の父」グーテンベルクの生地で、印刷技術に関するグーテンベルク博物館があります。

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グーテンベルク博物館

ライン河沿いで収穫して造ったワインの集散地でもあり、昔、ワインの積み出しに使っていた古いクレーンが記念に保存されています。また、ワインを絞る機械も保存されており、このワインを絞る機械は印刷機を作る時に参考にされたとも言われています。

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ブドウ絞り機

このマインツからライン河下りを楽しむことができます。船を選べばコブレンツまでのライン河下りの船旅を楽しむことができ、筆者はコブレンツからリューデスハイムやマインツまでのライン河上りを2度体験しています。

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ドイツの源流から555kmポイント(ローレライ付近)

実はライン河には、橋の架かっているのが少ないことが言えます。マインツからコブレンツまでをライン河下りをすると橋を見ることがありません。

マインツからコブレンツまでのライン河の距離は約65kmもありますが、この区間には全く橋がかかっていません。この区間は「ライン渓谷中流上部」として世界遺産に登録されており、クルーズ船でゆったりと流れを楽しみながら、中世の雰囲気をたたえる古城や可愛らしい街並みなど、ロマンあふれる風景を眺めることができることでも有名です。橋を架けないで景観を大事にするドイツ人の深い思いを感じることができます。

また、コブレンツはライン河とモーゼル川の合流地点であり、「ドイチェス・エック(ドイツの角)」と呼ばれている。

ライン河は西ヨーロッパで最も重要で、かつ、風景明媚な河川で、ライン河は運河として重要な交通網であるだけでなく、歴史の中でしばしば政治や軍事的事件の中心となった。

ライン河は「母なるドナウ」に対して 「父なるライン」 と呼ばれている。このライン河はスイスアルプスのゴットハールトとザンクト・ベルナディーノ山岳地帯の氷河にその源を発しており、それぞれ前ライン、後ラインといわれています。 この2つのアルプス地域の流れはアルプスラインのクールの少し前で合流し、ブレゲンツでボーデン湖に流れ込んでいる。

ボーデン湖に流れ込んだラインの水は、シュタイン・アン・ライン近くでボーデン湖から再び流れ、シャウハウゼンの滝を通って、バーゼルまでを高ラインと呼ぶ。バーゼルからマインツまでを上ライン、そしてマインツからボンまでを中ラインと呼んでいる。下ラインでは、流れがだんだんゆっくりなり、河幅が広くなり、ルール地方を通り過ぎ、オランダを通って北海へ注ぐ全長約1,320kmの大河です。

このライン河には想い出があります。ドイツのデュセルドルフに住んでいた時に、なにか記念になることを残そうと思って、デュセルドルフから源流に向かって積み立て方式(尺取虫方式)で、毎月歩き、約450km分を歩いてフランスの国境まで達しました。ライン河を歩いたことによって自然を大事にし、景観も配慮していること知りました。

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2024/01/22

2024年 年頭所感 柴野会長より

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2024年 年頭所感

新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

 4年に及ぶ新型コロナウイルスによる行動制限が、2類から5類への移行により随分緩和され、これに伴って経済も活気を取り戻しつつあり、長年続いてきたデフレ傾向も次第に回復の兆しを見せておりました。

ところが、新年早々、御屠蘇気分に浸る間もなく大惨事「能登半島付近を震源とする大地震」が発生しました。被害形態が違う直下型で家屋倒壊が多い「阪神・淡路大震災」と津波被害が甚大な「東日本大震災」の双方の被害形態を併せ持つ巨大地震で、今年の経済の動向にも少なからず影響を与えるだろうと推測されます。震災に遭われた皆さんの健康と、一刻も早い復興を祈念いたします。

世界に目を向けてみると、火山の大噴火と巨大地震が相次いで発生しており、地球の存亡が気にかかるところです。一方、天変地異とともに最近の世界経済に大きな影響を与えている事象に、異常気象の元凶と言われている地球温暖化に伴う異常気象多発の問題があります。干ばつ・洪水・巨大台風の発生・山火事の頻発などは、地球温暖化に起因しているだろうと言われています。かけがえのない地球を次代の人達に残すため、私たちは精一杯の努力を惜しんではなりません。天変地異や地球温暖化等に起因する自然災害で破壊された環境を修復し、より良いものとするためにすべての人が協力しあわなければなりません。

海外で広がり始めていた「ボランティア活動」が、29年前、阪神・淡路大震災にみまわれたことを契機に、日本でも芽生えました。見返りを求めない奉仕の精神で被災者を助ける素晴らしい活動です。素晴らしい地球を守り、後世に残していくための思想・技術・行動が今ほど求められているときはありません。とはいえ、社会を維持するための経済活動をないがしろにした環境保全・改善活動が、有り得ないことは過去の経験から明らかで、経済活動あっての環境活動です。そのためには、ボランティア精神に基づいた経済活動を活発にする環境保全施策を講じる必要があります。

私たちNPO法人「日本環境技術推進機構」は、自然災害に加え、人と人とが争い殺しあうといった波乱含みの社会においても環境技術の開発、環境経営を目指しておられる事業者の皆さんを支援することが使命であると考えております。このような基本的な考えのもと、本年も多くの皆さんのご支援を得ながら、事業を推進させていただく所存です。この趣旨にご賛同いただき、多くの皆さんの参加・ご協力をいただきますようお願いいたします。

 

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2023/05/07

コーヒーを飲みながら環境を語る(5)「黒い森」 理事 青木正光

いよいよスイスのバーゼルからライン河を下るとドイツに入ります。フランス、スイス、ドイツの三国が接するバーゼルから、少しドイツ側に入るとフランスとスイスの国境を接するのが南ドイツのバーデンヴュルテンベルク州があります。ドイツで二番目に大きな州となります。

1.「黒い森」が「黄色い森」へ

ここにモミ、マツなどの針葉樹を主体とした広大な森林地帯が広がり、電車や車で通過するにも結構な時間がかかります。東西30~50 km南北160 kmにわたってあり、総面積60万ヘクタールもあるシュヴァルツヴァルト(Schwarzwald)と呼ばれる「黒い森」があります。筆者も何度かスイスからドイツに入る時に列車で通過を経験しています。ドイツ人が誇りにするドイツ最大の森林であり、紀元前1世紀頃から「黒い森」と呼ばれ始めたと言われています。森林が破壊される前は、ブナやナラの落葉樹林で覆われ、自然を満喫できる場所でもあったそうです。中世時代には、この「黒い森」の多くの木々が切られて燃料として使用されてしまいました。その後、19世紀になって植林されて、現在の「黒い森」として復活しました。この恵まれた黒い森の多くの木々が1970年代に、「酸性雨」や「大気汚染」が原因で、立ち枯れてしまったのです。スイスやフランスからの汚れた大気が流れてきて酸性雨による森林被害は75%にもなり、中世の疾病のペストになぞらえて“緑のペスト”とも呼ばれていました。酸性雨の影響により、葉が黄色になり、“「黒い森」は「黄色の森」に変わった”と揶揄もされました。

このような環境問題を解決するために市民レベルが立ち上がり、酸性雨問題のみならず道路建設反対やドイツで初めての原子力発電所建設阻止運動へと展開していき、1983年の連邦議会選挙では、初めて連邦議会に進出を目指した環境保護政党である“緑の党(Green Party)”が27議席も獲得するまでになりました。南ドイツのバーデンバーデンは静かな保養地でもあり、「緑の党」の地盤でもあります。この保養地にもロシアのウクライナ侵攻に伴い各国がロシアに対して経済制裁を実施しました。ロシアは逆にドイツへの天然ガスの供給を大幅削減しました。こんなことから近くにある原発は年内に廃炉予定でしたが、「稼働を延長せよ」という声が高まり、ドイツの「脱原発」からの離脱論が叫ばれるようになってきました。また、環境NGOのBUNDは、今や20万人を擁する団体となっていますが、実はフライブルク大学の学生が創った環境保護グループと周辺地域にあった他の二つの自然保護グループが合併した形で設立されたのがルーツとなっています。

黒い森をある程度、通り過ぎると前述の運動を展開した人口 約23万人のフライブルグの町に到着します。

2.「環境首都」のフライブルグ市

ドイツ・フライブルグは、ドイツの他の都市に先駆けて環境行政を開始した町でもあり、ドイツで二番目に古いフライブルグ大学(1457年創立)があり、学生の街でもあります。フライブルグ市は、1970年代初めに原子力発電所建設計画があり、この案に対して、多くの市民が豊かな自然を守るために反対運動を起こしました。1977年にフライブルグ行政裁判所が原子力発電所の建設中止を命じる判決をだし、1974年以来、懸案であった点が解決をみることになりました。これが、ドイツ最初の原子力建設反対運動の勝利につながった例となっています。この運動があったからこそ、環境を大事にする市民の輪が広がり、結束して様々な対策を実施することになり、結果的には、「環境首都」に選定されるまでになったとも言われます。つまり、フライブルグ市民の環境に対する意識が高いとも言われます。これは、市民が自然環境を保ち、大事にしなければならないとの意識があったからであり、フライブルグの取組みは世界から注目されるようになり、環境関係者の視察で、ドイツを訪問するミッションは、必ずと言っていいほどフライブルグ市を見学先として選んでいます。フライブルグ市は、廃棄物対策、交通対策、自然保護、エネルギー対策、気候保全の5つの環境対策を掲げて取組んでいます。その一例を紹介しましょう。

2-1ごみ処理

フライブルグは、バーデンヴュルテンベルク州に所属するためバーデンヴュルテンベルク州廃棄物処理法とともにフライブルグ市廃棄物経済条例の規定に従う必要があります。この規定は、循環経済・廃棄物法および州廃棄物処理法に基づいて改正された市の廃棄物処理に関する条例です。この条例には、市が実施する廃棄物処理の範囲、ごみの排出方法、手数料、罰則等についての詳細が規定されています。フライブルグ市のゴミ処理として次のような大きな取組みがあり、ごみの減少に効果をあげています。

 a.ゴミをいかに減らすか!

各家庭に「バイオゴミバケツ」を支給し、家庭でゴミをコンポスト化する指導も行っており、コンポストなどによる家庭での生ゴミ処理を推進。さらにリターナブル容器の普及、自動販売機の削減、簡易包装の定着化から布オムツ利用の促進などを実践しています。

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簡易包装の実践 (過剰包装はしていない)

 b.ゴミを再利用できないか?

8つの種類に分別し、主要3種類のゴミ分別容器を配布して分別を推進するとともに、ゴミカレンダーによる情報も提供しています。

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色別のガラスの分別ゴミ容器(左から白、緑、茶)

2-2 パークアンドライド方式

市外部の駐車場は無料で市内の駐車場は有料にして、市内には車で入るのを抑制し、公共交通 [便利なのがライトレールトランジット(LRT)と言われる路面電車]の利用を促進できるような制度を1996年に導入しました。

レギオカルテ(地域環境定期券) [66マルク/月(1999年)→54マルク/月(2001年)→36ユーロ/月(2003年)→41ユーロ/月(2005年)→44ユーロ/月(2008年)→48ユーロ(2011年)→54ユーロ(2014年→63ユーロ(2017年)→69ユーロ(2020年]を購入すれば全ての鉄道・バスなどの交通機関が乗り放題となります。無記名で貸し借り自由で、日曜・祭日は大人2人、子供4人まで1枚の定期券で利用できます。

近郊から市内に入るには、先ず車で周辺各所にある「P+R」 (パークアンドライド)に駐車し、そこから路面電車などに乗り換えて繁華街に入る方法となります。市内には、5,200台の駐輪場があります。

また、乗り継ぎが容易にできるように路面電車(LRT)がドイツ鉄道(DB)の駅を跨ぐような形で設置されています。

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レギオカルテ        

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             パークアンドライドを示す標識

2-3 エコステーション

フルブライグ市と州の助成の下で敷地約3,000㎡の環境教育センターが1986年、設置され、BUNDの職員やボランティアで運営している組織。年間350を越す行事を開催し、センターの訪問者数は、年間12,000人以上にもなると言われます。環境関係の教育の場となっています。

  2-4 ソーラーの町

 再生可能エネルギーの中で、フライブルグ市は太陽光エネルギーの利用を促進している町でもあります。 シューアベルグ団地、ヴァバーン団地は、ソーラー団地でもあります。

http://www.eco-partner.net/m_ichiran/index.htm

 参考資料

INDUST 2008年9月号

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2023/03/13

前田先生(理事)より 1

 前田先生(理事)よりグリ-ンBDFの製造利用について報告がありました。

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2023/01/12

年頭所感  柴野会長より

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新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。昨年は、新型コロナウイルスの話、ソ連とウクライナの戦争の話など、暗い話がありましたが、今年は、これらの問題が解決し、明るい話題があふれるようになってほしいものです。

コロナウイルスの蔓延や戦争の発生が環境問題にも大きな影響を与えました。エネルギー源の流通が滞り、思い通りの量の確保がむつかしく、他のエネルギー源に頼らなければならなくなり、価格高騰を招くなどの問題が派生しました。しかし、悪いことばかりではなく、労働形態の変化や、生産効率の向上といった面も現れたことは、今後に期待を持たせることで歓迎したいことです。広く社会全体を見回すと、地球温暖化対策の進捗スピードが鈍化するのではないかと危惧されます。高騰した資源・エネルギーが企業の経営に影を落とし、経費節減が環境対策費を圧迫している事象があります。

「今は、企業として存続できるかの瀬戸際にあって、環境問題を優先できる状態ではない。」といった声が聞かれます。

 現状は、経済活動が停滞しているので、二酸化炭素の総排出量の削減が行われているように見えますが、経済が活性化した時に、計画通りの削減が実現できているか気にかかるところです。 

地球温暖化の問題を解消し、将来世代に快適な地球を引き渡すためには何をしなければいけないか。排出量を減らすことは最も重要なことかもしれませんが、現状のペースでいって間に合うのか。あまりにも安易に「排出量取引」を考えていると思います。対策困難だからと言ってむやみに認めるべきではないと思うし、そのような時期ではなく、もっと切羽詰まっている現状があるのではないでしょうか。タイムリミットに間に合わせるためには、排出量の削減だけではなく、空気中に現存する二酸化炭素を回収しなければいけないのではないでしょうか。 半世紀も前になりますが、二酸化炭素ガスを固形化して地中に埋めるために高濃度の二酸化炭素を固形化している設備を見学したことがあります。この技術は実証実験が済んで、実用化のめどが立ったとのことです。高濃度のガスからの回収ができたのだから、次は低濃度のガス(空中の)を固定化できるのか。できるとすれば何時頃になるのかを知りたいし、期待したいところです。

現実に目を戻すと、環境対策を継続したいが、経営を維持するためには犠牲にしなくてはならないと考えている事業者が多数いることを見逃してはいけないと思います。環境問題に携わる者として、「何が何でも環境対策。」ではなく、いかに「環境と経営を両立させるか。」に論点を置かないと現実は前に進みません。ISOやEA21などの環境マネジメントシステムでは、「経営に役立つ環境対策」に重点を置くようになっています。

私たちNPO法人日本環境技術推進機構は、リスクがある社会においても環境技術の開発、環境経営を目指す事業者を支援することが使命だと考えています。このような基本の考えに基づき、本年も多くの皆さんのご支援を得てNPO法人日本環境技術推進機構の事業を推進させていただく所存です。この趣旨にご賛同いただき、できるだけ多くの皆さんのご参加・ご協力をいただきますようお願いいたします。

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2023/01/02

2023年 謹賀新年

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謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申しあげます。昨年は大きな事件がありました。環境に関しての大きな事件はやはりロシアのウクライナ侵攻で、各国のエネルギー政策に対する考え方が激変した年といって良いでしょう。又、原子力エネルギー、化石燃料、再生エネルギー、電気自動車・・・、環境技術に関するキーワードがメディアに数多く登場しました。SDGsというワードも頻繁に出てきました。環境政策、環境技術に対する注目度が増した年といって良いでしょう。我国の環境政策と環境技術の両輪がうまく回り出すことを願ってやみません。

 本団体は今年も多くの環境技術の紹介と普及を推進していく所存です。ご支援・ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。今年(2023年)のJETPAはさらに内容を充実し積極的な活動を幅広く展開していく所存です。

 今年のJETPAの環境事業

1.環境技術発掘・評価事業
優れた環境技術を発掘し、評価・広報・普及する活動

2.環境技術の交流・移転事業
内外関係機関、団体との技術交流会、親睦会の開催、環境技術の調査、開発支援活動

3.環境技術に関するネットワ-ク構築事業
産官学による環境技術の研究会・講演会・ゼミナ-ルの開催

4.環境相談事業
環境マネジメントシステム構築、ISO14001認証取得、エコアクション21認証取得・登録支援、環境技術の調査

2023年 元旦 特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 理事一同

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2022/10/01

コーヒーを飲みながら環境を語る(4) 欧州人の環境意識  理事 青木正光

  ドイツのフライブルグからアウトバーンを使って自動車、あるいは電車を使って北上すれば、フランクフルト、マインツとなり、ライン河沿いにある古城を見ながらケルン、デュセルドルフへと続きます。マインツから船でライン河下りを楽しむのもよし、フランクフルトからライン河沿いを通る電車を利用して車窓を楽しむのもよし、古城、ブトウ畑、ローレライなどを堪能することができるルートで、素晴らしい景色となります。6~7月に訪問すれば、最高の季節だと思います。

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ライン河沿いにある古城    ライン河を航行する船

1.ドイツとの接点

  欧州には、環境にも関係したビジネスで、たびたび出張し、フランクフルト空港からデュセルドルフまで行く際に車窓からお城やライン河の風景を見ていました。その後、ドイツ・デュセルドルフに3年駐在する機会に恵まれることになったのです。既存のビジネスを見ながら新規のビジネスで欧州でのマーケティング活動の使命を持っての責任者としての赴任です。折しもスウェーデンのIVFが主宰する「電子機器の国際難燃化プロジェクト」のコンソーシアムに参加していたので、ドイツからであれば日本よりも参加し易い背景もあり、駐在するのを楽しみにしていました。ドイツに赴任する直前に短期集中の赴任心構えなるものの研修を受講しました。異文化社会での振舞いを疑似体験し、さらには礼儀作法から英語による ディベート、交渉術、即答術などを含めての短期でしたが密度の濃い研修でした。最終日には、過去、駐在経験のある先輩諸氏の苦い失敗談を盛り込んでの話しがあったので真剣に聞いたことを思い出します。「ドイツを一言で言えば・・・」と言って駐在経験者が語ったのは1.ドイツ人は綺麗好きである 2.ケチである 3.物を大事にする 4.環境先進国でゴミひとつ捨てるにも苦労する 5.丈夫な長持ちをする製品化作り 6.魚は焼けない 7.日曜日は安息日で店は休みで音(芝刈りなど)のでるような作業はできない 8.アパートに住んでいると22時以降のお風呂は遠慮する必要がある。(流す水の音で階下の住民から苦情を言われる可能性がある) 9.誇り高き民族であり、自分の失敗を認めたがらないなどでした。上記の内容を聞けばある程度想像がつくものの、もし、自宅の窓を綺麗にしていなければ、あるいは、庭に雑草が生えていれば見知らぬドイツ人が尋ねてきて注意される・・・と。あるいは焼き魚は死臭の臭いがすると言ってドイツ人から嫌われる・・・など。赴任してみるとこれは本当であったことを実感しました。ゴミ処分にしても日本と比較すると回収回数は少なく自宅には大きめのゴミ箱を用意しての一時保管。そして街角に置いてある瓶、紙、衣類などの回収箱で処分するなどドイツ式のゴミ処分について学びました。

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個人の家のゴミ箱       街角に置いてあるゴミ箱(衣類、瓶、紙用)

  駐在した時期は、20年前の1990年代後半です。この時代にスーパーマーケットでの買い物にはマイバックを持参しての買い物がドイツでは一般化していました。レジ袋は既に有料であったので車のトランクの中にマイバックをいつも常備して対応していました。 野菜、果物などは計り売りが一般化し、「パック詰め」ではなく「ばら売り」でした。ドイツ包装廃棄物政令が発令されたのも、うなずけます。練り歯磨きは、二重包装(チューブ+箱包装)はなく、チューブのみの簡易包装、鉛筆は、カラー塗装されていない無地の鉛筆で、ホテルではタオルの使い方の要請文や固形石鹸から液状石鹸への切替などが進んでいました。レジ袋が日本で2020年7月から有料化され環境対応が始まりましたが、欧州は20年前に既に実施されていたのです。さて、赴任して暫くたつとドイツ人のみならず多くの欧州人と面識となり、いつしか夜遅く、飲みながら話しを聞くような機会もありました。  筆者の最大の関心は、「何故、欧州人はこれ程まで環境に関心を示しているか?」でした。色々と聞くと以下のような環境意識を持っていることが次第に分かってきました。

 2.欧州の環境意識

欧州で、山と言えばスイス・アルプス。アルプスの山々を見ると壮大な風景をまの当たりにします。北欧においては、森林と湖に囲まれ、実に風光明媚な自然環境に恵まれているのを実感し、これが「欧州」といった感じを受けます。環境先進国であるドイツでは「我々は環境を無傷の状態で子孫に引き渡す義務がある」と言うドイツの環境モラルがあります。また,国土が狭くて埋め立てでできたオランダでは「地球は親から譲り受けたものではなく、子どもから借りているもの」と言った思い入れがあります。オランダ廃家電処理協会では「先祖が築いた土地を冷蔵庫の墓場にするな」とのスローガンもあり、さらにデンマークには、「問題解決を子孫に残さない」というスローガンがあります。カトリック教会ローマ法王ヨハネ・パウロ2世の1991年 年頭教書では、「企業の良さの基準は一つの利益だけではなく、人間を大事にする倫理と持続できる価値、安全、環境などを大事にする」ことであると述べています。このように欧州の各国は,次世代までを想定しての「環境」を守る姿勢が特に強くあります。

3ドイツ人の環境意識

  ドイツ人は特に環境意識が高くて、「環境先進国」とも言われています。長持ちをする製品化作りをモットーにし、物を大事に使うのがドイツ人でもあります。環境意識に強く影響したのは、ルール工業地帯から排出される煤煙で、青空が見えないほど悪化した状況だったそうです。筆者は昔、山口県宇部市に住んだことがあります。1950年代の宇部は炭鉱の町で、隣の小野田はセメントの町であり、当時、煤煙で空気は汚れており、その経験からするとルール地方も同様な状況ではなかったかと推察されます。1961年に「ルールに青空を!」のスローガンを掲げての運動が始まったと言われます。日本から炭鉱技術者としてドイツのルール地方に移住した経験の人が、今も、デュセルドルフに住んでおり、昔のひどかった空であったと述懐していました。「ルールに青空を!」の運動を指揮したのが当時、野党のブラント党首でした。そして1968年に政権に就き、各種の環境保護政策にメスをいれて環境対策に本腰が入れられるようになりました。
 その後、欧州ではイタリアで発生したダイオキシン汚染、ドイツや北欧などが国境を越えた酸性雨による被害、ウクライナのチェルノヴィリの原発事故の汚染された空気が周辺諸国に流れるなどが相次ぎ、さらには、バルト海汚染問題などが明らかになってきました。これらは、国民の環境問題への関心を高めるきっかけとなると同時に環境意識に大きな影響を及ぼしました。1980年代に廃棄物問題が指摘され環境汚染の進行に伴い、必然的にドイツ人の環境意識も高揚したと言われます。1986年に制定されたリサイクルを主眼にした「廃棄物法」と同法14条に準拠して策定された「包装廃棄物政令」が施行されたことで、ドイツの環境問題は、国民にとって身近な存在となったとも言われます。このような背景から前述した過剰包装を避け、レジ袋を有料化し、マイバックを持参しての買い物の一般化しているなどは、国民の高い環境意識が根底にあるからだと思います。

 参考資料

INDUST 2008年10月号

 

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2022/06/17

コーヒーを飲みながら環境を語る(3) No.3 ライン河環境汚染事故 (サンドス事件) 理事 青木正光

スイスのバーゼル市内の中を、スイスを源流とするライン河が流れています。ライン河は、スイス、リヒテンシュタイン、オーストリア、フランス、ドイツなどを経由してオランダのロッテルダムまで流れる全長 1.320kmにおよぶ大河です。バーゼルまでは、大型タンカーや貨物船の運行が可能で、バーゼルはライン河最上流の港にもなり、中部ヨーロッパの物流の大動脈となっています。山岳で有名なスイスで、バーゼル市内を流れるライン河に大型タンカーや貨物船が航行しているのを見た時は、「こんな山奥にタンカーが・・・」と唖然としました。

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写真1 ライン河を航行するタンカー

バーゼルから河口のオランダのロッテルダム港までは884kmの距離にあり、バーゼル市のほぼ真ん中を流れるライン河の川幅は200mもあります。訪問したのが、寒い12月でしたが、多くの人がミッテレール橋からライン河を見ているので何だろうと思っていたら寒中水泳をライン河で行なっていました。結構、流れは急でした。学校で、ヨーロッパの大動脈の一つとして「ライン河」があると教えられましたが、スイスのバーゼルに来て現場を見て、初めて、その重みを理解することができました。また、バーゼルには、スイス第二の都市で、時計と宝石の見本市でも有名で、電子材料、染料、製薬などを製造する化学品工場が集結している場所でもあります。ドイツに入るとヘキスト、BASF、バイエルンなどの大手化学会社がライン河沿いに位置します。1979年にライン河を化学物質で汚染されないように”ライン河化学防止条約”が締結されていました。この6カ国を流れるライン河で、実は環境事故が1986年11月1日に発生しました。スイスのバーゼル郊外にある化学会社「サンドス」の956倉庫(1,351トンの化学物質を貯蔵)の火災事故が原因で、化学物質が炎上・爆発し、消化水とともに倉庫から流出した有機水銀化合物や殺菌剤等の有害物質により、ライン河が汚染された事件で、「サンドス事件」と言われるものです。30種類の農薬を貯蔵した工場の火災が原因で、30トン近くの有害物質がライン河に流入し、ウナギなどの50万匹の魚類が大量に死滅したほか、飲料水、農業用水やビール工場の取水も一時停止されるなどの事態となりました。ドイツのコブレンツまで大量の魚が死に至らしめたといいます。火災から11日後には、オランダの河口に達し、北海を汚染しました。この汚染事故でライン河は「ヨーロッパの下水」とも言われました。この事件は、ドイツ、スイス、オランダなどのライン川の下流の沿岸国まで拡散し、深刻な被害を与えた事件で、国境を越えた大規模な環境汚染を引き起こしました。化学物質の汚染からライン河の水質を守るために「国際ライン河保護委員会」が創設され、排水規制の強化へと進展しました。被害規模が大きかったことに加え、環境対策には熱心と考えられていたスイスで発生したことから沿岸国だけでなく、欧米諸国に大きな衝撃を与えました。また、化学工場など有害物質を扱う工場の事故についての国際的な取り組みの必要性が強く認識されることになり、工場の事故に関する経済協力開発機構(OECD)の勧告・決定を制定する契機 にもなり、さらにバーゼル条約を制定するアイディアにつながったものでした。

さて、実は、このライン河について、楽しい思い出があります。筆者は、ドイツに住んでいる時に「なにか記念となるものを残したい・・・」という気持ちが湧き上がり、環境調和型製品のマーケティング活動しているビジネスを成功させせる願いもあって、「ライン河歩き」を思い立ちました。住んでいる家近くからライン河までは徒歩、10分で行け、休日には、ライン河の土手を、散策を兼ねて歩いていました。看板をみると「750」の数字がありました。これは、ライン河のドイツの源流であるボーデン湖までの距離であることを暫らくして知ることになりました。ドイツでは、ライン河に対岸からでも見える大変大きな標識看板が1kmごとに立てられています。小さい標識では、100mごとに整備されています。道も「乗馬用の道」、「サイクリング用の道」、「歩行者用の道」の3つが整備されている場所もあります。この数字の「750」に魅せられて、ドイツ駐在中に歩こうとの気持ちに駆られ、毎月、積立方式でライン河のドイツの源流までの750kmを歩くのを計画しました。

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写真2 ライン河歩き (ボーデン湖から609kmの距離/逆さまから読んでも同じ)

実は、学生時代にワンダーフォーゲル部に所属し、九州徒歩縦断 (約600km)と四国徒歩横断 (約450km)を実施した経験がありましたので、ワンダーフォーゲル発祥のドイツでウォーキングを試してみたかったのもありました。

帰任するまでの間、毎月、積立方式で歩き、450km分を歩き、フランスの国境まで達しました。ボーデン湖から555kmの距離にあるローレライを通過する時には、総勢11名の参加者となりました。

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写真3 ボーデン湖から555kmに位置するローレライからライン河を望む

 歩いて分かったことは、ライン河は、物流の大動脈のみならず飲料水としても重要な役割をしていることでした。ライン河の果たす役割は重要なものと言えます。そういう意味では、ライン河をいつも綺麗に保っておくことが重要と言えます。ライン河を汚染した環境事故は、大きな教訓を残す形となりました。

 


解説

ライン河化学汚染防止条約

1976年に作成されたライン河化学汚染防止条約は、ドイツ連邦共和国政府、フランス共和国政府、ルクセンブルク大公国政府、オランダ王国政府、スイス連邦政府およびヨーロッパ経済共同体(当時)が締約国で、ライン河の化学汚染が同河川の動植物相に対して脅威を与え、また海水に対して望ましくない影響をもたらす事情に鑑み、有害な物質の排出を段階的に削減することにより除去したり、規制したりすることを狙いとして1979年発効された条約です。

参考資料

INDUST 2008年7月号

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2022/05/01

花王株式会社 訪問 グリーン舗装の提案 (期待される廃PET活用高耐久アスファルト改質剤)



今回は廃棄されるPETボトルを活用して道路舗装の改質剤を開発した花王株式会社ケミカル事業部門を訪問し、開発のきっかけや製品の特長、導入実績について話を伺った。対応していただいたのは機能材料事業部エコインフラ リーダー 酒寄 智視氏、同 機能材料事業部 エコインフラ 疋田 真奈人氏である。(写真左:酒寄 智視氏  写真右:疋田 真奈人氏)

- 廃PET活用高耐久アスファルト改質剤ニユトラック 5000開発のきっかけ

弊社は家庭用品の企業と見られがちですが、弊社のケミカル事業は花王グループ全体の売上高の約20%を占めており、本事業においては従来から道路舗装用の各種添加剤の販売をしてきました。今回の廃PET活用アスファルト改質剤はその研究開発の延長線上にあるものです。花王のコピー機用トナーバインダーの技術(ある一定温度で溶けるポリエステル樹脂)を道路舗装に応用できないかというアイデアがニユートラック 5000の開発のきっかけになっています。そして、この開発は弊社のESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」のプラスチック資源削減・再利用の活動の流れに沿ったリサイクルイノベーションの1つと言えます。

- ニユートラック 5000の特長

弊社のアスファルト改質剤を使用することにより従来のアスファルト舗装と比較すると大きく以下の5つの優位性があげられます。(資料出典:花王㈱ケミカル事業部門 機能材料事業部 エコインフラ グリーン舗装の提案より1.高耐久化(資料1-1、資料1-2)、2.施行工期の短縮(資料2)、3.舗装の黒さ・美観の維持(資料3)、4.廃ペットを活用し環境貢献(資料4-1、資料4-2))

   



 
資料1-1        資料1-2

1.高耐久化に関しては(資料1-11-2)を見ていただければわかりますが、道路舗装には大きく3種類あります(①コンクリート舗装、②半たわみ性舗装(アスファルト+セメント使用した舗装)、③アスファルト舗装)。③は非常に安価で施工性に優れるという長所がありますが、わだち掘れ等の耐久性についての課題があります。耐久性が求められる重交通箇所では従来②を適用するのが日本では一般的ですが②の場合工期が長くかかるという欠点があります。上記の2つの問題を解決したのが、アスファルト改質剤『ニユートラック5000』です。

資料2

2.半たわみ性舗装との比較です。

資料3

3のアスファルト舗装の黒さ・美観の維持については、通常のアスファルト舗装に比べ『ニュートラック』を使用したアスファルト舗装の方が白線の視認性向上に加え、駐車場の美観性向上にも貢献できると考えています。

   

 



資料4-1        資料4-2

4.PETを活用した環境貢献ですが、(資料4-14-2)の通り廃PETを単純に混ぜているのではなく、特殊な添加剤と共に化学反応させ、全く新たな素材へと生まれ変わらせています。それをアスファルト混合物にわずか1%程添加することで高耐久化を実現するというケミカルアップサイクル(価値の低い素材に手を加えてより高い付加価値を生みだすこと)を具現化いたしました。

- ニユトラック5000の導入事例

ニュートラック5000の導入実績は以下になります。(資料出典:花王㈱ケミカル事業部門 機能材料事業部 エコインフラ グリーン舗装の提案より

 

   



      
ヒアリングを終えて
PETボトルのリサイクルに関して筆者はいままでいろいろな取組を見てきたが、いざ製品化されて使用する段階になるとなかなか前に進まないものが多かったような気がする。理由は「環境に良い>使用者側のメリット」という式が一般的だったからだと推測している。今回話を聞いていて「環境にも良い=使用者側のメリット」という原則を再認識させられた気がする。ケミカルアップサイクル(価値の低い素材に手を加えてより高い付加価値を生みだすこと)はまさにこの原則を地でいっているのではないだろうか?ケミカル事業部門 機能材料事業部の多分野での今後の活躍に期待したい。

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2022/03/27

コーヒーを飲みながら「環境」を語る (2)「バーゼル条約」とは?理事 青木正光  

筆者が、環境に関係することになったのは、欧州に訪問したのが縁で始まりました。スイスの「バーゼル」に訪問する機会がありましたので有害廃棄物に関係深い「バーゼル条約」について紹介しましょう。

1.バーゼル条約で知られる「バーゼル」へ

実装関係のビジネスに携わった関係で、米国に続き、欧州と関係を持つようになりました。個人ベースでは、1980年にイギリス、フランス、イタリアの3カ国には駆け足で訪問したことがありましたが、業務で初めて欧州に出張したのは、1994年の冬の寒い12月で、スイス、英国、スウェーデンの3カ国を訪問しました。欧州に訪問する機会が巡ってきたのは、幸運なことにスイスのバーゼルで開催される欧州のプリント配線板協会(EIPC)主催の冬季大会での発表要請があったからで、初めてスイスを訪問することになりました。山や自然の好きな筆者は、アルプスの山々をまの当たりにすることができるのでスイスを訪問できるのは、またとない機会と思い発表資料の作成には全く苦にならず準備しました。当時、日本からはドイツのフランクフルト空港までの直行便で行き、翌日の飛行機便に乗り継ぎ、スイスのバーゼル空港に行くことになりました。フランクフルト空港に到着したのが夕方に近い午後でバーゼル行きの夕方便は到着した日にはなく、フランクフルトで1泊することになりました。幸運なことに同じ航空会社の便を利用したため宿泊代は航空会社持ちで、フランクフルト空港前にあるシェラートンホテルに宿泊することができました。さて、初めてのスイス訪問でワクワクしている状況の中で、飛行機がバーゼルに近づき、機内アナウンスで着陸を告げる案内がありました。雲一つない快晴の下の飛行で、外を見ると山らしき山が見えません。12月にも拘らず雪もありません。本当にスイスに近づいているのであろうか?・・・と思ったぐらいです。スイスに近づいて来たので当然ながら高いアルプスの山々があり、雪が積もっていると思っていました。しかし、ほぼ平らな平野に着陸するような感じでしたので「ヒョットすると違った空港では?・・・」と頭の中をよぎりました。以前、米国で、間違えて別の州の空港で降りてしまった苦い失敗経験がありましたので、不安になり、どこでミスしてしまったのかと思ったぐらいでした。フランクフルト空港で搭乗案内があった時に行き先を確認して乗っており、ミスは無い筈と思いつつ、着陸して空港に近づくと”EuroAirport”となっているではありませんか!バーゼル空港でないと思い、間違えたのか、それとも離陸して更にバーゼル空港まで行くのかと思いました。よく見ると”バーゼル・ミュールーズ・フライブルグ”と記載されており、バーゼルと言う名前があるので間違いないようでもあるし、一抹の不安に思いながら降りました。

Euroairport

EuroAirport

そして、入国審査するのに前を歩いている人に付いて行っただけで、入国審査を受けるのに何も疑いを持ちませんでした。なんとバーゼル空港は、スイスにあるのではなく、フランス領にあって、入国するのにスイス入国口のみならずフランス入国口の二つがあり、スイスに入国しないで誤ってフランスに入国してしまうと厄介になることは、あとになって知った状況でした。この時は、偶然、スイス入国口に行き、問題なくスイスに入国しました。こんなことを全く知らない状況で、スイスのバーゼルに行けば、スイスと思い、アルプスの山々があると思っていたのは大きな間違いでした。日本の空港に着いたら、そこは日本ではなかったという信じられない状況をスイスで体験しました。このバーゼルは、フランス、スイス、ドイツの3カ国の境界となる場所がライン河の中にあり、それを示す碑がある場所でもあります。3国が接する位置になります。こんなことがあって、3年後の1996年には、このバーゼルで第7回電子回路世界大会が開催され、座長の立場で参加する機会を得、幸運なことに再び、バーゼルに訪問することができました。丁度、この頃、電気・電子機器に含有する有害物質がWEEE指令の草案に挙げられて議論されて時期でしたので、環境調和型製品の発表の場ともなり、欧州では環境配慮に力を入れていることを知りました。この時の関わりからも以降、環境に深く関係することになりました。

 

2.「バーゼル条約」とは?

さて、このバーゼルの名前は、環境分野でも使用されています。実は国連環境計画 (UNEP)で検討された「有害廃棄物の越境移動およびその処分の規制に関する条約」がバーゼルの地で、締結され、通称「バーゼル条約」と言われます。バーゼルに訪問する機会があり、バーゼルに因んだ条約だったので大変、興味深く、条約を読みこなしました。1989年3月に検討され、158カ国が批准し、1992年5月に発効した有害廃棄物の越境について取決めされた条約です。この「バーゼル条約」を検討するに至ったのは、1976年7月、イタリアのセベソで農薬工場が爆発を起こし、ダイオキシン汚染事故となりました。そのダイオキシン汚染土壌を入れたドラム缶が1982年9月に行方不明となり、8カ月後にフランスの村で発見された事件を契機に有害廃棄物の国を越えての越境移動管理について検討が開始されました。さらに1987年6月、イタリア企業がナイジェリアのココ港にポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む有害廃棄物を不法投棄した事件で、イタリア政府が非を認め、カリンB号(ドイツ船籍)に有害物質を回収して欧州に向けて出港したものの住民により入港を拒否され、公海をさまよった事件がありました。これらの問題により、有害廃棄物の越境問題が真剣に検討され、「バーゼル条約」となりました。そして1992年に発効された「バーゼル条約」は、2019年に改正され、2019年6月現在、187カ国が「バーゼル条約」に批准していますが、米国はOECD加盟国ですが、残念なことに「バーゼル条約」は締結していません。

<解 説>


バーゼル条約

 1980年代に、ヨーロッパの先進国からの廃棄物がアフリカの開発途上国に放置されて環境汚染が生じるという問題がしばしば発生したことを受け、こうした課題に対処するために1989年3月、スイスのバーゼルにおいて一定の有害廃棄物の国境を越える移動等の規制について国際的な枠組み及び手続等を規定した「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」が採択されました。

参考資料

INDUST 2008年6月号

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2022/01/25

2022年 JETPA 年頭所感  柴野会長

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新年明けましておめでとうございます。新型コロナウイルスの新規感染者数が減少し始め、経済にも復活の兆しが見え始めたときに出現したオミクロン株が急速に広まり始めました。次々に現れる変異株。いつ治まるとも分からない現況にAfterコロナではなく、Withコロナが取りざたされる事態となりました。いずれにしても、コロナが世界経済に与えた影響は計り知れず、働き方改革に歩調を合わせるようにリモート、在宅勤務という言葉が巷にあふれるようになってきました。コロナが収まったとしてもリモート、在宅勤務の流れが元に戻るとは思われません。コロナによってもたらされた経済、社会の変化を元に戻すというより現状を起点にさらに発展させるという発想が重要だと考えます。すなわち、リスクをチャンスに変えるという考え方です。一方で、干ばつ、大雨、低温、高温といった異常気象が世界各地で発生し大きな被害を与えています。これらの現象は地球温暖化によってもたらされているというのが通説になっていて、すなわち脱炭素社会の構築が喫緊の課題となったと言えます。これら人類の存亡にかかわる大事件に我々はどう対処すればよいのでしょうか。イデオロギーの違いでいがみ合っている時でありません。人類が一致して難題に立ち向かわなければならないときです。経済の発展を妨げるような手法ではなく、斬新な手法によって解決策を模索することが必要と考えます。私たちNPO法人日本環境技術推進機構は、リスクに立ち向かい環境技術の開発、環境経営を目指す事業者を支援することが使命だと考えています。このような基本の考えに基づき、本年も多くの皆さんのご支援を得てnpo法人日本環境技術推進機構の事業を推進させていただく所存です。どうか、できるだけ多くの皆さんのご参加・ご協力をいただきますようお願いいたします。

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2022/01/01

2022年 JETPAの目標

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謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申しあげます。昨年,我が国は コロナ禍で東京オリンピック・パラリンピックを無事実施いたしました。このことは大変誇らしいことと考えています。成功した理由は現場で実際に動いた方々の努力が大きいのではないでしょうか。そして積極的にやってみるということの大事さが伝わったのではないでしょうか。メディア(ネット・TV・ラジオ・新聞)の情報過多の昨今、どうもこの現場の実行力を軽視しているように思えてなりません。メディアの情報<現場の不等号が本来の姿で逆ではありません。環境問題については本来、環境問題は環境技術に収束することが大きくそこに活動家等が出る場面は少ないはずです。環境に関するメディアの情報がブランド戦略化される現代ではますます一次情報が重要になってくると思われます。

 本団体は今年も多くの環境技術の紹介と普及を推進していく所存です。ご支援・ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。今年(2022年)のJETPAはさらに内容を充実し積極的な活動を幅広く展開していく所存です。

 今年のJETPAの環境事業

1.環境技術発掘・評価事業
優れた環境技術を発掘し、評価・広報・普及する活動

2.環境技術の交流・移転事業
内外関係機関、団体との技術交流会、親睦会の開催、環境技術の調査、開発支援活動

3.環境技術に関するネットワ-ク構築事業
産官学による環境技術の研究会・講演会・ゼミナ-ルの開催

4.環境相談事業
環境マネジメントシステム構築、ISO14001認証取得、エコアクション21認証取得・登録支援、環境技術の調査

2022年 元旦 特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 理事一同

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2021/12/31

エコプロ2021&SDGsWeekEXPO2021雑感 鈴木理事より

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東京ビックサイトで開催されていたエコプロ2021SDGWeekEXPO2021128日(金)訪問した(13ホール)。今回はコロナ明けでもあり、久々の展示会参加で短時間(午前中)にできるだけ多くのブ-スを見ようと頑張ってみた。大学教育機関や団体のブースがまとめられていてわかりやすかった。恒例の参加者がアンケートに答え、又、セミナー参加でグッズをもらう催しは活気があった。私が見た企業ブースは大体においてコンパクトにまとめられ良く工夫されていたと思う。主催者発表によると来場者総数は54,885人で私が参加した128日は17,550人である。

今年の会場内を訪問していて注目したのは(見学した範囲であるが)4つある。

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1.海洋プラスチックごみ対策パビリオンの住友重機械工業㈱

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(展示されていたナノセルロ-スを素材(一部分使用)とした車)

2.ナノセロ-ス展の京都市産業技術研究所

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3.災害対策トイレ展のみのる化成㈱

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4.社会インフラテックエリアの花王㈱である。

いずれも機会があれば詳細を後日取材したいと思っているが、なかでも花王㈱の回収ペットを道路舗装用に使用するニュ-トラック5000と、みのる化成のエコットトイレには大変興味を持った。

道路とトイレ人間の生活には必要欠くべからざるもので目に見える現実的で有効な技術ではないかと感じた次第である。

 

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2021/12/19

コーヒーを飲みながら「環境」を語る (1) ウィーン条約/モントリオール議定書とは? 理事  青木正光

 

 今や企業では

 1.循環型社会の形成

 2.環境負荷物質対策

 3.環境調和型製品の開発

 4.地球温暖化対策の推進

 5.SDGsを意識した事業展開

等を掲げて推進する時代となってきました。環境問題を配慮する時代になったのではないかと思います。

今回、環境問題に対する対策や環境規制に関して過去、どのような問題があり、どのように対応したかを鳥観しながらシリーズで解説したいと思います。

コーヒーブレークのつもりで、気軽に読んで頂ければと思います。最初に「オゾン層破壊物質」のフロンの削減に関して紹介したいと思います。

1960年頃からフロンガスは冷蔵庫の冷媒や断熱発泡剤として先進国を中心に使用され、冷蔵庫の普及、さらにはエアコンの普及に伴ってフロンの使用が拡大していきました。

 ところが、1974年、カリフォルニア大学のF. S. Rowland教授らにより、フロンガスがオゾン層破壊の原因との論文を発表し、この事実が確認されると、脱フロンが他の地球環境問題に先駆けて国際的に検討されるに至りました。

そして、1985年、「オゾン層保護のためのウィーン条約」1) が採択され、規制プランは条約に基づく「モントリオール議定書」2)に委ねられ、1987年 採択され、1989年に発効しました。

 フロンはオゾン層破壊物質でもあることからモントリオール議定書の締結にともなって実装業界でも使用廃止が叫ばれ、エレクトロニクス業界ではいち早く対応することになりました。最初に取り組んだのが洗浄剤として多用されたフロン、その後、冷媒として利用されたフロンの代替が検討されました。その経緯について紹介しましょう。

 

1.洗浄剤のフロン削減

 プリント配線板に部品や半導体デバイスなどを実装したプリント回路板をフロンやトリクレンで洗浄していました。搭載する部品や半導体デバイスをはんだ付けする際にフラックスを使用するため、実装後にフラックスの残渣を洗い落すためにフロンで洗浄していました。

 早いところでは、1987年には脱フロン関係の社内プロジェクトを立上げて対応した企業もあります。

 実装業界で使用削減を進展し、先ず、民生機器向けのプリント回路板(プリント配線板に部品や半導体デバイスを搭載した基板)の「フロン洗浄」から「アルカリ洗浄」が検討されました。

 稼動開始後、洗浄のアルカリ廃液の処分問題が課題となり、その後、「アルカリ洗浄」から「水洗浄」へと取り組みが検討されました。この頃は、写真で示すように洗浄問題をホットな話題として取り上げて技術雑誌で対応について紹介されました。

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「フロン対策と実装」を伝えるエレクトロニクス実装技術(1992年9月号)

実装業界で並行して検討されたのは、洗浄ラインのみならず、はんだ付けに使用されるフラックスも低残渣タイプの開発も検討されるに至りました。

 最終的には低残渣の無洗浄タイプのフラックスが開発されるのも相まって「無洗浄」へと進展しました。無洗浄にしてもイオンマイグレーションの発生が起きないことを1年にわたる検証実験で確認し、以降、全機種のノートパソコンに適用されるに至りました。そして、特殊例を除き、大半の製品に無洗浄が適用されて、脱フロンを達成することができました。

 

2.冷媒/断熱材の代替

1990年代、冷凍冷蔵庫のオゾン層破壊物質の削減をするために先ず、「特定フロン」を代替して「代替フロン」を使用するようになりました。2000年代になると代替フロン(R134a、R32)へ切り替わりましたが、代替フロンはオゾン層を破壊しない物質ですが、二酸化炭素(CO2)の 3,000倍の地球温暖化への影響があるということから代替フロンの使用を止め、2011年以降の冷凍冷蔵庫の冷媒はイソブタンの冷媒R600aとなり、「ノンフロン」になりました。冷媒は、フロン→代替フロン→ノンフロンへと転換されていきました。

冷凍冷蔵庫のドアの裏蓋に貼ってあるラベルには、イソブタンであるR600aと記載している例が多いかと思います。写真1は、2014年製の冷凍冷蔵庫で、イソブタンを冷媒に、断熱発泡ガスはシクロペンタンを使った例となります。

1度、家にある冷凍冷蔵庫のドアを開けて裏に貼ってあるラベルを確認してみてください。古い冷凍冷蔵庫であると代替フロンの可能性がありますが、2010年代以降の冷凍冷蔵庫であれば、ノンフロンのイソブタンの冷媒、シクロペンタンの断熱発泡剤になっているかと思います。

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図1 ノンフロン冷凍冷蔵庫 (冷媒はR600a)

以上、脱フロンの取組みとして洗浄剤と冷媒/断熱材の例について紹介しました。

<解 説>

 1.オゾン層保護に関するウィーン条約

  オゾン層の保護のための国際的な対策の枠組みに関する条約で、1985年3月に採択され、日本は1988年加入し、1988年9月に発効した。条約事務局はナイロビのUNEPに置かれている。

2.モントリオール議定書

 オゾン層を破壊するおそれのある物質を指定し、これらの物質の製造、消費および貿易を規制することを目的とし、1987年にカナダのモントリオールで採択された議定書。

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2021/09/23

新型コロナウィルスを抑制する「深紫外線LED」技術 日機装株式会社 訪問 

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写真:(左よりメディカル事業本部ヘルスケア事業本部 部長  中摩貴浩氏、UV応用機器グルプ 小永吉英典氏)

筆者は今から2年前にENEX2020の会場で、日機装株式会社(当時、日機装技研株式会社)の深紫外線の光源をLEDに変え水の除菌をする技術を知った。(コロナ禍の前である。)その後、新型コロナウィルスが蔓延し取材も延び延びになってしまったが、深紫外線LED技術は進展し深紫外線LEDを用いて新型コロナウィルスを抑制する画期的な製品が実用化されて現在に至っている。今回は、深紫外線LEDの開発と製品について日機装株式会社を訪問しお話を伺った。対応していただいたのはメディカル事業本部ヘルスケア事業本部 部長 中摩貴浩氏、同 UV応用機器グループ 小永吉英典氏、企画本部 経営企画部 広報・IRグループ 西村愛氏 である。

1.深紫外線LEDの開発について

 深紫外線とは280ナノメートル以下の短い波長の光のことをいい、高い除菌能力を持ち、この光を照射することでウィルスや細菌の増殖を抑えることができます。これまでの主な光源は水銀ランプで医療機器、工場や研究機関、食品分野等での除菌や検査などで利用されてきました。弊社の深紫外線LEDの開発はノーベル物理学賞受賞者のご指導のもと、2006年から研究を重ね、2015年に世界で初めて50Wの光出力と10,000時間以上の寿命を持つ深紫外線LEDの製品化に成功しました。光源が水銀ランプからLEDに変わる事で今後、用途に合わせた波長の選択ができ、製品の小型化、長寿命化、環境に優しい製品作りが可能になったのです。この成功を基に今後血液透析事業を含めいろいろな分野に用途広げていこうと考えています。

* 深紫外線の光源には従来水銀ランプが使われてきましたが水銀の人体への影響や環境への有害性から国際的に取り扱いが制限されることになっています。(水銀に関する水俣条約)

2深紫外線LEDと新型コロナウィルスについて

1)深紫外線LEDを使った空間除菌消臭技術の開発について

先に深紫外線LEDの製品化に成功したのは水除菌で流水除菌モジュールや水除菌装置でした。水は流路が決まっていればそこに照射すれば除菌が可能ですが、空気を除菌する製品の開発は多くの課題がありました。

●空気は空間全体に広がるので水のようにタ-ゲットを決めて照射することは困難です。空気中に散乱する菌に深紫外線を当てて除菌するには捕捉しなければなりません。                                                     ●紫外線は人体に直接当たると目や肌を痛めるので光が漏れないように作らないといけません。                      ●紫外線は材料を劣化させるので材料を選定しなければいけません。                                  ●装置は大規模化、高コスト化を抑え実用化しなければなりません。

上記の課題をクリアした製品が完成したのが2020年1月でした。画像にあるようにこの製品の特長は金属光触媒フィルターで空気中の菌を捕捉し深紫外線を照射して空気除菌して循環させるシステム(パッシブ型)にあります。

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画像:(日機装社パンフレットより)

2)深紫外線照射による新型コロナウィルスの不活化について

2020年7月31日、弊社と共同研究をしている宮崎大学の研究論文が英国科学誌「Emerging Microbes & Infections」に掲載されました。その内容は弊社の深紫外線LEDの照射による新型コロナウィルス*1の不活化試験について、30秒、60秒の照射により新型コロナウィルスを99.9%減少させる結果に加え、10秒で99.9%、1秒で87.4%の減少を確認したことが報告されています。(*1は、SARS-CoV-2/Hu/DP/Kng/19-027、LC528233 神奈川衛生研究所より分与)

また、2021年6月15日当社と宮崎大学医学部の共同研究講座である「医療環境イノベーション講座 Collaboration Labo. M&N」において実施された"深紫外線LEDによる新型コロナウィルス変異株の不活化に関する研究論文"が、国際学術雑誌「Pathogens」に掲載されました。論文では、当社の深紫外線LED(日機装社製「SumiRay」)を新型コロナウィルス変異株[英国由来株(hCoV-19/Japan/QHN001/2020*、南アフリカ由来株(hCoV-19/Japan/TY8-612/2021*、ブラジル由来株(hCoV-19/Japan/TY7-501/2020*4]に照射した結果、全株において1 秒照射で90%以上、5 秒照射で 99%以上ウィルスが不活化された、と報告されています。                (*2,3,4は、国立感染症研究所より分与)
感染拡大やワクチン耐性等懸念される新型コロナウィルス変異株に対しても従来株と同様に深紫外線LED照射が不活化に有効であったという今回の研究結果は、今後の感染対策に有益なデータであり、深紫外線LEDを搭載したデバイスの開発は、接触感染や空気感染の軽減に貢献できると期待されます。

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VeroE6/TMPRSS2細胞における細胞変性効果3種類のSARS-CoV-2変異体(英国、南アフリカ、ブラジル由来株)のウィルス溶液を0、1、または5sの連続的なDUV-LED照射で処理し、10倍希釈し、VeroE6/TMPRSS2細胞に接種した。代表結果を示す。ウィルス感染による誘導された細胞変性効果(a)は、1s(b)または5s(c)の3.75または18.75 mJ/cm2に相当する照射により減少した。(d) 非感染細胞

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VeroE6/TMPRSS2細胞におけるプラーク形成3種類のSARS-CoV-2変異体(英国、南アフリカ、ブラジル由来株)のウィルス溶液を0、1、または5sの連続的なDUV-LED照射で処理し、100倍希釈し、VeroE6/TMPRSS2細胞に接種した。代表結果を示す。ウィルス感染により誘導されたプラーク(a)は、1s(b)または5s(c)の3.75または18.75 mJ/cm2に相当する照射により減少した。(d) 非感染細胞

画像:(NIKKSO ニュ-ス 2021年622日 より)

3.日機装株式会社について

 1953年の創業以来、インダストリアル事業(産業用特殊ポンプやそのシステム製品)、精密機器事業(電子部品製造装置等)、航空宇宙事業(CFRP製航空部品)、メディカル事業(血液透析やヘルスケア製品の医療部門機器)を核に様々な産業分野で活躍する製品を提供しています。

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画像:(日機装グル-プのビジネスフィ-ルド 日機装株式会社 メディカル事業本部ヘルスケア事業推進部 UV応用機器グル-プ 資料より)

4.ヒアリングを終えて

 今回、話を伺いながら驚いたのは、日機装株式会社は、コロナ禍の前に深紫外線LEDの水除菌に関する製品開発が完了しており、コロナ禍中においてウィルスに対応できる深紫外線LEDの空間除菌に関する製品を完成させたところである。(臨機応変な技術開発力の高さである。)この深紫外線LED技術は日常生活に入り込み、新型コロナウィルスを鎮静化するための有効なTechniqueではないだろうか

 

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2021/05/18

電気自動車が本命だろうか? 理事 青木 正光

2020年12月に観測史上最大となる24時間で113cmの大雪になり、関越自動車道の高速道路で1,100台の車が立往生し、しかも雪が湿っていて重い質感だったことも重なり車の渋滞を引き起こした。そして年を越して2021年1月9日から11日にかけての大雪の影響により、今度は北陸各地で高速道路や一般道で立往生が起こった。北陸自動車道では福井県内の福井インターチェンジから金津インターチェンジまで、最大で1,000台以上の車が巻き込まれて渋滞を引き起こした。

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北陸自動車道の渋滞状況

(産経新聞2021-01-10)

 北陸では2018年12月の豪雪で国道8号線において約1,500台が立往生したことが過去に起きている。今回、除雪作業が追い付かなかったのか、過去の事例が活かされなかったようにも思える。この立往生して車が一歩も動けない状態のテレビ報道や新聞報道を見てふと思った。今、排ガスを排出しないことで電気自動車が脚光を浴びて、普及に力を入れている状態で主に欧州で展開が進展している。

しかし、1,000台以上が渋滞に巻き込まれ、しかも高速道路で身動きができなくなった車が全て”電気自動車”であったらと思うと「ゾッ」としたのである。近い将来のことを想像しての感想である。産経新聞が報道した写真をみても大変な状況であることが分かる。缶詰状態になった運転手は歩いて食べ物を買い出しに行き渋滞が解消するまで長期戦で構えたという。冷房の温度差は、5~8℃でたいしたことはないものの暖房の温度差は約30℃(-5→25℃)で、ガソリン車はエンジンから熱が出るため、暖房エネルギーはゼロである。電気自動車はバッテリーから暖房のエネルギーが必要となる。冬の高速道路で渋滞状態が長くなれば、当然ながら車の中では寒さを避けるために暖房を入れる筈で、電気自動車は走っていなくても暖房のために電気を消費するだけである。渋滞が長時間におよべばバッテリーの電気は無くなり、”ガス欠”ならぬ”電欠”になるのである。しかも、全ての電気自動車が”電欠”になった場面を想像したので「ゾッ」としたのである。”電欠”した車にどうやって高速道路から動かして出すのであろうか?と思った。つまり、電気をどうやって”電欠”した車に送るのであろうか?・・・と思った次第である。電欠の電気自動車は”高速道路”は”拘束道路”になってしまうのである。“ガス欠”ならばガソリンをポリタンクに入れて持参して各々の車に供給すれば即、始動することができる。”電欠”となった電気自動車となると立往生した高速道路上で充電設備がない限り、充電はできない。延々と続く車にどうやって充電するのかと思った。移動式急速充電設備を搭載した特別車がどうも必要とも思ったが、1,000台ものを賄うにはとても無理ではないかとも思った。1,000台の電気自動車に順番に充電して高速道路から抜け出すには、相当な時間を要することが容易に類推できる。 どうも、まだまだ、電気自動車一辺倒で突き進むのは早計と思い、当分の間はガソリン併用の”ハイブリッド車”に軍配があがりそうだ。“電気自動車”は、確かに走行中は二酸化炭素などを排出しないが、製造段階から廃棄までのライフサイクルアセスメント (LCA)で二酸化炭素の排出量を比較するとハイブリッド車>電気自動車>ガソリン車の順となり、1) やはり、ハイブリッド車が、二酸化炭素の排出量が少なく軍配があがる。 欧州の英国は2035年以降、フランスは2040年以降ガソリン車/ディーゼル車の国内販売を禁止する動きとなっているし、ベルギーのブリュセルは2030年以降、ブリュッセル市内でのジーゼル車の乗り入れを禁止、オランダでも同じく2030年からアムステルダム市内でのガソリン車・ジーゼル車の乗り入れを禁止するとの方針が出され、欧州ではガソリン車やジーゼル車をしめ出すような動きとなってきた。さて、この2030年までに”ハイブリッド車”なのか、”電気自動車”なのか、それとも”燃料電池車”なのか、どれが本命になるであろうか?・・・と思った次第である。少し冷静になって総合的な観点からの判断が必要のようだ。

<参考資料>

1.槌屋治紀, ”燃料電池” p103 ちくま新書 (2003)

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