いよいよスイスのバーゼルからライン河を下るとドイツに入ります。フランス、スイス、ドイツの三国が接するバーゼルから、少しドイツ側に入るとフランスとスイスの国境を接するのが南ドイツのバーデンヴュルテンベルク州があります。ドイツで二番目に大きな州となります。
1.「黒い森」が「黄色い森」へ
ここにモミ、マツなどの針葉樹を主体とした広大な森林地帯が広がり、電車や車で通過するにも結構な時間がかかります。東西30~50 km南北160 kmにわたってあり、総面積60万ヘクタールもあるシュヴァルツヴァルト(Schwarzwald)と呼ばれる「黒い森」があります。筆者も何度かスイスからドイツに入る時に列車で通過を経験しています。ドイツ人が誇りにするドイツ最大の森林であり、紀元前1世紀頃から「黒い森」と呼ばれ始めたと言われています。森林が破壊される前は、ブナやナラの落葉樹林で覆われ、自然を満喫できる場所でもあったそうです。中世時代には、この「黒い森」の多くの木々が切られて燃料として使用されてしまいました。その後、19世紀になって植林されて、現在の「黒い森」として復活しました。この恵まれた黒い森の多くの木々が1970年代に、「酸性雨」や「大気汚染」が原因で、立ち枯れてしまったのです。スイスやフランスからの汚れた大気が流れてきて酸性雨による森林被害は75%にもなり、中世の疾病のペストになぞらえて“緑のペスト”とも呼ばれていました。酸性雨の影響により、葉が黄色になり、“「黒い森」は「黄色の森」に変わった”と揶揄もされました。
このような環境問題を解決するために市民レベルが立ち上がり、酸性雨問題のみならず道路建設反対やドイツで初めての原子力発電所建設阻止運動へと展開していき、1983年の連邦議会選挙では、初めて連邦議会に進出を目指した環境保護政党である“緑の党(Green Party)”が27議席も獲得するまでになりました。南ドイツのバーデンバーデンは静かな保養地でもあり、「緑の党」の地盤でもあります。この保養地にもロシアのウクライナ侵攻に伴い各国がロシアに対して経済制裁を実施しました。ロシアは逆にドイツへの天然ガスの供給を大幅削減しました。こんなことから近くにある原発は年内に廃炉予定でしたが、「稼働を延長せよ」という声が高まり、ドイツの「脱原発」からの離脱論が叫ばれるようになってきました。また、環境NGOのBUNDは、今や20万人を擁する団体となっていますが、実はフライブルク大学の学生が創った環境保護グループと周辺地域にあった他の二つの自然保護グループが合併した形で設立されたのがルーツとなっています。
黒い森をある程度、通り過ぎると前述の運動を展開した人口 約23万人のフライブルグの町に到着します。
2.「環境首都」のフライブルグ市
ドイツ・フライブルグは、ドイツの他の都市に先駆けて環境行政を開始した町でもあり、ドイツで二番目に古いフライブルグ大学(1457年創立)があり、学生の街でもあります。フライブルグ市は、1970年代初めに原子力発電所建設計画があり、この案に対して、多くの市民が豊かな自然を守るために反対運動を起こしました。1977年にフライブルグ行政裁判所が原子力発電所の建設中止を命じる判決をだし、1974年以来、懸案であった点が解決をみることになりました。これが、ドイツ最初の原子力建設反対運動の勝利につながった例となっています。この運動があったからこそ、環境を大事にする市民の輪が広がり、結束して様々な対策を実施することになり、結果的には、「環境首都」に選定されるまでになったとも言われます。つまり、フライブルグ市民の環境に対する意識が高いとも言われます。これは、市民が自然環境を保ち、大事にしなければならないとの意識があったからであり、フライブルグの取組みは世界から注目されるようになり、環境関係者の視察で、ドイツを訪問するミッションは、必ずと言っていいほどフライブルグ市を見学先として選んでいます。フライブルグ市は、廃棄物対策、交通対策、自然保護、エネルギー対策、気候保全の5つの環境対策を掲げて取組んでいます。その一例を紹介しましょう。
2-1ごみ処理
フライブルグは、バーデンヴュルテンベルク州に所属するためバーデンヴュルテンベルク州廃棄物処理法とともにフライブルグ市廃棄物経済条例の規定に従う必要があります。この規定は、循環経済・廃棄物法および州廃棄物処理法に基づいて改正された市の廃棄物処理に関する条例です。この条例には、市が実施する廃棄物処理の範囲、ごみの排出方法、手数料、罰則等についての詳細が規定されています。フライブルグ市のゴミ処理として次のような大きな取組みがあり、ごみの減少に効果をあげています。
a.ゴミをいかに減らすか!
各家庭に「バイオゴミバケツ」を支給し、家庭でゴミをコンポスト化する指導も行っており、コンポストなどによる家庭での生ゴミ処理を推進。さらにリターナブル容器の普及、自動販売機の削減、簡易包装の定着化から布オムツ利用の促進などを実践しています。

簡易包装の実践 (過剰包装はしていない)
b.ゴミを再利用できないか?
8つの種類に分別し、主要3種類のゴミ分別容器を配布して分別を推進するとともに、ゴミカレンダーによる情報も提供しています。

色別のガラスの分別ゴミ容器(左から白、緑、茶)
2-2 パークアンドライド方式
市外部の駐車場は無料で市内の駐車場は有料にして、市内には車で入るのを抑制し、公共交通 [便利なのがライトレールトランジット(LRT)と言われる路面電車]の利用を促進できるような制度を1996年に導入しました。
レギオカルテ(地域環境定期券) [66マルク/月(1999年)→54マルク/月(2001年)→36ユーロ/月(2003年)→41ユーロ/月(2005年)→44ユーロ/月(2008年)→48ユーロ(2011年)→54ユーロ(2014年→63ユーロ(2017年)→69ユーロ(2020年]を購入すれば全ての鉄道・バスなどの交通機関が乗り放題となります。無記名で貸し借り自由で、日曜・祭日は大人2人、子供4人まで1枚の定期券で利用できます。
近郊から市内に入るには、先ず車で周辺各所にある「P+R」 (パークアンドライド)に駐車し、そこから路面電車などに乗り換えて繁華街に入る方法となります。市内には、5,200台の駐輪場があります。
また、乗り継ぎが容易にできるように路面電車(LRT)がドイツ鉄道(DB)の駅を跨ぐような形で設置されています。

レギオカルテ
パークアンドライドを示す標識
2-3 エコステーション
フルブライグ市と州の助成の下で敷地約3,000㎡の環境教育センターが1986年、設置され、BUNDの職員やボランティアで運営している組織。年間350を越す行事を開催し、センターの訪問者数は、年間12,000人以上にもなると言われます。環境関係の教育の場となっています。
2-4 ソーラーの町
再生可能エネルギーの中で、フライブルグ市は太陽光エネルギーの利用を促進している町でもあります。 シューアベルグ団地、ヴァバーン団地は、ソーラー団地でもあります。
http://www.eco-partner.net/m_ichiran/index.htm
参考資料
INDUST 2008年9月号
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